中国の著名な政治学者でベンチャーキャピタリストの李世默(Li Shimo)氏は、2025年が国際秩序の大きな転換点になるとの見解を示した。米国主導の一極集中型グローバル化が終わりを告げ、多極化の時代が到来する中で、アジアがその中心的な役割を担うと予測している。

多極化時代におけるアジアの役割

李氏は、現代の国際情勢を「単極的グローバル化の終焉」と定義。これに代わる新たな秩序として多極化時代が到来したと分析する。その中でアジアは、グローバルサウスにおける最大の勢力であり、豊富な資源、先進技術、巨大な人口、そして増強される軍事力を背景に、国際的な影響力を増大させるとした。

また、アジア地域は多様な文化が共存し、各国が自主的な発展を目指す意識が強いと指摘。こうした特性が、特定の大国に依存しない、より公正で多角的な国際関係のモデルを構築する原動力になるとの見方を示した。

グローバルサウスの旗手として

李氏の議論の核心は、アジアが単なる経済的な成長センターにとどまらない点にある。アジアは、欧米中心の既存秩序とは異なる価値観や開発モデルを提示する「グローバルサウス」の旗手となり得ると主張する。同氏によると、アジアの台頭は、世界のパワーバランスを根本的に変え、新たな国際秩序を形成する上で決定的な要素となる。

この動きは、アジアが自らの将来を自らの手で決定しようとする強い意志の表れであり、今後のグローバル化のあり方を大きく左右するだろうと、李氏は結論付けている。この発言は、中国の視点から見た世界秩序の再編に関する展望として注目される。

結論:日本への示唆

李世默氏が指摘する「多極化時代」におけるアジアの台頭は、日本企業にとって事業戦略の再考を迫る。特に、李氏が強調するアジアの「豊富な資源、先進技術、巨大な人口、そして増強される軍事力」は、日本のサプライチェーンや地政学的リスクに直接的な影響を与える。

第一に、資源の安定確保と技術協力の多角化が喫緊の課題となる。これまで中国を主要な生産拠点や市場としてきた日本企業は、グローバルサウス諸国、特にASEAN諸国との連携を強化し、サプライチェーンの分散化を進める必要がある。例えば、EVバッテリーの重要素材であるリチウムやコバルトの調達先を、中国依存からインドネシアやベトナムなどへ広げることで、地政学リスクを低減できる。

第二に、アジアにおける軍事力の増強は、日本の安全保障環境と経済活動に新たな不確実性をもたらす。南シナ海や東シナ海での緊張が高まれば、海上輸送ルートの安全性が脅かされ、エネルギーや原材料の輸入に支障をきたす可能性がある。このため、日本企業は、有事の際の事業継続計画(BCP)をより具体的に策定し、代替輸送ルートや在庫確保戦略を検討する必要がある。

第三に、李氏が示唆する「欧米中心の既存秩序とは異なる価値観や開発モデル」の台頭は、日本の知的財産保護やビジネス慣習に影響を及ぼす可能性がある。中国主導の国際機関や標準化団体におけるルール形成への関与を強化し、日本の技術やノウハウが不当に利用されないよう、外交・経済の両面からの働きかけが不可欠となる。