2022年の北京冬季オリンピックは、中国のウィンタースポーツ界に大きな転換点をもたらした。蘇翊鳴(スー・イーミン)や谷愛凌(アイリーン・グー)といった新世代のスター選手が国際舞台で目覚ましい活躍を見せ、国内の競技人口も大幅に増加。新たな巨大産業の育成を加速させている。
新世代スターの台頭
北京冬季オリンピックを象徴するのが、10代の若きスター選手の誕生だ。スノーボード男子の蘇翊鳴は、ビッグエアで金メダル、スロープスタイルで銀メダルを獲得。フリースタイルスキー女子の谷愛凌は、ビッグエアとハーフパイプで金メダル、スロープスタイルで銀メダルと、出場3種目すべてで表彰台に上がった。
彼らの活躍は、中国国内でウィンタースポーツへの関心を一気に高める起爆剤となった。新華社通信によると、彼らの勝利はソーシャルメディアで爆発的に拡散され、多くの若者がスキーやスノーボードに挑戦するきっかけを作ったと報じられている。
3億人市場の創出と産業の発展
中国政府はオリンピック開催を契機に「ウィンタースポーツ人口を3億人にする」という目標を掲げてきた。中国国家体育総局の発表によれば、2021年10月時点で国内の競技・レジャー人口は3億4600万人に達し、目標を前倒しで達成した。
この巨大な需要に応えるため、国内のスキーリゾートや関連施設の建設が急ピッチで進んでいる。用具やウェアなどの関連市場も急速に拡大しており、中国のウィンタースポーツ産業は、オリンピックをテコに大きな発展段階に入った。今後、施設運営や人材育成、関連消費の拡大が持続的な成長の鍵となる。
日本企業への示唆
北京冬季五輪が中国ウィンタースポーツ市場を飛躍させたことは、日本企業にとって新たなビジネス機会と競争激化の両面をもたらす。まず、中国国家体育総局が発表した「3億4600万人」というウィンタースポーツ人口は、日本のスキー・スノーボード用品メーカーにとって、かつてない規模の潜在顧客層を意味する。例えば、デサントやゴールドウインといった日本のスポーツアパレル企業は、機能性やデザインにおける強みを活かし、急拡大するウェア市場でのシェア獲得に注力できる。特に、蘇翊鳴や谷愛凌といった若年層に影響力を持つスター選手を起用したマーケティング戦略は、ブランド認知度向上に有効だろう。
一方で、中国国内企業の台頭による競争激化は避けられない。中国政府が掲げる「ウィンタースポーツ人口3億人」目標達成は、国内のスキーリゾート開発や関連産業への投資を加速させ、中国ブランドの品質向上と価格競争力強化を促す。日本の老舗スキー場運営会社や観光業者にとっては、中国人観光客誘致の好機であると同時に、中国国内の施設との差別化戦略が喫緊の課題となる。例えば、日本の高品質な雪質や温泉文化と組み合わせた体験型ツアーの提供、あるいは、中国の富裕層をターゲットとした高付加価値なサービス展開が求められる。単なるインバウンド需要への依存ではなく、中国市場の成長を取り込むための戦略的な提携や投資も視野に入れるべきだ。