中国の全国人民代表大会(全人代)で、AIの普及などに伴い急増するコンピューティングリソース(計算能力)の需要と、それに伴うエネルギー供給の課題解決が重要な議題となった。何光華・全人代代表は、計算能力とエネルギーの連携開発が不可欠であると指摘し、国家レベルでの統合的な政策推進を提言した。
計算能力とエネルギーの連携を強化
何代表は、コンピューティングリソースとエネルギーの需給を一体的に管理する開発計画の策定を求めた。具体的には、電力会社が電力供給量だけでなく、データセンターなどが消費する計算需要を測定・予測する仕組みを構築する必要があるとした。また、データセンター事業者などのIT企業が、電力市場から直接、再生可能エネルギー由来の電力(グリーン電力)を調達できる制度の整備も提唱した。これにより、ITインフラの持続可能性を高める狙いがある。
電力システムのデジタル化と強靭化
電力インフラの高度化も急務である。何代表は、電力システムのデジタル化推進の重要性を強調した。現在、一部の電力会社ではドローン(無人機(ドローン))による送電網の巡回検査や、小規模な電力網であるマイクログリッドの監視技術が導入されている。しかし、データセンター向けの専用早期警戒システムの導入はまだ不十分にだと指摘。電力システムの安全技術を国家重点研究開発計画に組み込み、異常気象に対する耐久性の高い配電設備を開発する必要があるとの見解を新華社通信などが伝えている。
産学連携による専門人材の育成
こうした新たな産業分野の発展を支える人材の育成も不可欠だ。何代表は、高等教育機関と企業が密接に連携し、コンピューティングリソースとエネルギーの両分野に精通した複合的な専門人材を育成するプログラムを構築すべきだと述べた。これにより、技術革新と産業の持続的な成長を担う次世代のリーダーを確保する考えだ。
日本市場への影響
中国全人代でAI時代の電力不足への対応が提起されたことは、日本企業にとって複数の具体的な影響をもたらす。まず、中国が「グリーン電力」の直接調達制度を整備する動きは、再生可能エネルギー関連技術を持つ日本企業に新たなビジネス機会を生む。例えば、太陽光発電や風力発電の効率化技術、蓄電池システムを提供する企業は、中国のデータセンター事業者への直接供給を検討できる。
次に、電力システムのデジタル化と強靭化の推進は、日本の電力設備メーカーやITソリューションプロバイダーにとって、中国市場での需要拡大を意味する。記事中で言及されたドローンによる送電網検査技術や、データセンター向けの専用早期警戒システムの開発は、日本の得意分野である。特に、異常気象に対する耐久性の高い配電設備開発は、日本の耐災害技術が活かせる領域であり、中国の国家重点研究開発計画への参画も視野に入る。
一方で、中国が「コンピューティングリソースとエネルギーの両分野に精通した複合的な専門人材」の育成を国家レベルで強化する方針は、日本企業の人材戦略に影響を与える可能性がある。中国国内でのAI・エネルギー関連人材の囲い込みが加速すれば、日本企業が中国で優秀な人材を確保する難易度が上がる。そのため、日本企業は、中国市場での事業展開を加速させる場合、現地での人材育成投資を強化するか、日本の技術者派遣を増やすなどの対応が求められる。