中国の習近平国家主席(共産党総書記)は2024年1月30日、党中央政治局の集団学習で演説し、次期5カ年計画(2026〜30年)を見拠えて未来産業の育成を加速する方針を表明した。量子技術や人工知能(AI)などを重点分野に挙げ、経済の新たな成長エンジンと位置付ける。新華社通信などが伝えた。

習主席が描く「未来産業」の青写真

習主席は演説で、未来産業の育成が「質の高い発展」を実現する上で極めて重要だと強調。技術革新を主導し、新たな産業を創出することが中国経済の持続的な成長と国際競争力の向上につながるとの認識を示した。

具体的には、量子技術人工知能(AI)生物製造新エネルギー(水素、核融合)脳科学(ブレイン・マシン・インターフェースなど)といった最先端分野を列挙。これらを国家戦略として推進し、技術的優位性を確立する目標を掲げた。

国家主導で技術覇権を目指す

習主席は、未来産業の育成において企業が主体的な役割を果たすことの重要性を指摘しつつ、政府が政策支援を強化する方針も明確にした。研究開発への資金投入、人材育成、インフラ整備などを通じて、企業が挑戦しやすい環境を整える。

この動きは、米中対立を背景に、中国が重要技術の内製化とサプライチェーンの強靭化を急ぐ国家戦略の一環だ。産官学が一体となり、国家主導で技術覇権を目指す姿勢を鮮明にしている。ただし、育成には技術的な障壁や国際的な競争激化といった課題も山積している。

結論:日本への示唆

習近平国家主席が未来産業として挙げた量子技術や脳科学(ブレイン・マシン・インターフェース)への国家主導投資加速は、日本企業に新たな機会とリスクをもたらす。

第一に、新エネルギー分野における日本の優位性が脅かされる可能性だ。中国が核融合や水素といった分野を国家戦略として推進することは、トヨタ自動車や三菱重工業が持つ関連技術の国際競争力を相対的に低下させる恐れがある。中国が巨額の資金と人材を投入し、技術的ブレイクスルーを達成した場合、日本企業はグローバル市場での主導権を失う可能性がある。

第二に、量子技術やAIといった汎用技術の進化は、日本の既存産業のサプライチェーンに大きな影響を与える。例えば、中国が量子コンピューティング分野で先行した場合、素材産業や精密機械産業など、日本の基幹産業における製品開発や生産プロセスが中国の技術プラットフォームに依存せざるを得なくなるリスクがある。これは、経済安全保障上の脆弱性を高めるだけでなく、日本の技術的自律性を損なう可能性も孕む。

第三に、生物製造や脳科学といった未開拓分野における中国の国家戦略は、日本企業にとって新たな市場参入機会を創出する。例えば、中国の脳科学研究の進展は、医療機器や介護ロボット分野における新たな需要を生み出す可能性があり、オムロンや富士フイルムといった企業は、中国市場への技術提供や共同開発を通じて、新たな収益源を確保できるかもしれない。しかし、同時に中国の技術標準が国際標準となるリスクも考慮する必要がある。