中国政府は、深刻化する不動産不況と内需の低迷に対応するため、経済政策を総動員している。2024年の全国人民代表大会(全人代)で掲げた「5%前後」の経済成長目標の達成に向け、財政出動や金融緩和を強化するとともに、習近平指導部が提唱する「新質生産力」を新たな成長の牽引役と位置づけている。

財政・金融政策による景気下支え

中国政府は景気対策として、1兆元(約21兆円)規模の超長期特別国債の発行を決定した。インフラ投資や防災関連のプロジェクトに資金を供給し、需要を創出する狙いだ。また、中国人民銀行(中央銀行)は事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR)の引き下げや預金準備率の引き下げを断行し、市場への流動性供給を強化。企業の資金繰りを支援し、個人消費や設備投資を促す姿勢を鮮明にしている。

不動産市場に対しては、一部都市で実施されてきた住宅購入制限の撤廃や、住宅ローンの頭金比率の引き下げといった規制緩和策を推進。不動産開発企業への資金繰り支援も強化し、金融システムへの波及リスク抑制に努めている。しかし、住宅在庫の過剰感は根強く、市場の本格的な回復には時間がかかるとの見方が多い。

「新質生産力」でハイテク自立を加速

中国経済が直面する構造的な課題に対し、習近平指導部は「新質生産力」という新たな概念を打ち出した。これは、従来の不動産やインフラ投資に依存した成長モデルから脱却し、AI、半導体、バイオ製造、新エネルギー車(NEV)といった先端技術分野を新たな成長エンジンとする戦略だ。新華社通信によると、政府はこれらの分野への研究開発投資を大幅に増額し、技術的自立を目指す方針を強調している。

特にNEVや太陽光発電、リチウムイオン電池は「新三種の神器」とによるとされ、政府主導で大規模な投資が行われている。これにより、中国製品は国際市場で急速にシェアを拡大しているが、一方で欧米諸国からは過剰生産能力によるダンピング輸出への警戒感が高まっている。

日本への影響

中国政府が「新質生産力」を成長の柱に据え、AIや半導体、NEVといった先端技術分野への投資を加速させることは、日本企業にとって事業再編と競争戦略の見直しを迫る。特にNEV分野では、中国製品の国際市場でのシェア拡大が顕著であり、日本の自動車メーカーは、EVシフトの加速と、中国市場での競争力維持に向けた現地化戦略の抜本的強化が喫緊の課題となる。

また、中国が1兆元規模の超長期特別国債を発行し、インフラ投資を強化する動きは、日本の建設機械メーカーや素材メーカーに新たなビジネスチャンスをもたらす可能性がある。ただし、中国国内企業の技術力向上と価格競争の激化により、単なる製品供給に留まらない、より高度なソリューション提供や、日中合弁による第三国市場開拓といった協業モデルの模索が不可欠となるだろう。

一方で、中国不動産市場の低迷が長期化し、金融システムへの波及リスクが顕在化すれば、中国経済全体の減速を通じて、日本からの輸出や観光需要に悪影響が及ぶ可能性も考慮すべきだ。特に、中国経済の回復が遅れれば、日本企業の中国事業における収益悪化や、サプライチェーンの混乱といったリスクが顕在化する恐れがある。日本企業は、中国市場への過度な依存を避け、サプライチェーンの多様化や、ASEAN諸国など他地域への投資分散を進めることで、リスクヘッジを図る必要がある。