中国の全国人民代表大会 (全人代) が2024年3月に開幕し、李強首相は政府活動報告で、2024年の経済成長率目標を「5%前後」に設定すると表明した。不動産不況や地方政府の債務問題など国内に課題を抱える一方、国防費は前年比 7.2%増1兆6655億元 (約34兆8000億円) とし、軍備増強を継続する姿勢を鮮明にした。

2024年の経済目標と課題

李強首相が示した政府活動報告によると、2023年の国内総生産 (GDP) は前年比 5.2%増126兆元を超え、目標を達成した。2024年も同水準の「5%前後」という意欲的な目標を掲げ、経済の安定と質の高い発展を目指す。都市部の新規雇用者数目標は 1200万人以上 と設定された。

しかし、中国経済は不動産市場の長期低迷、地方政府の隠れ債務、デフレ圧力、若者の高い失業率といった複数の課題に直面している。報告では、こうしたリスクの防止・解消に取り組み、経済の強靭性を示す必要性が強調された。

国防費7.2%増、軍備近代化を加速

経済運営に慎重さが求められる一方で、国防費は2023年実績比で 7.2%増となり、2年連続で7%を超える高い伸び率となった。新華社通信によると、予算案は軍の近代化と戦闘即応能力の向上に重点を置くとしている。

これは、習近平国家主席が掲げる「強軍目標」の実現に向けた動きであり、特に台湾統一への圧力を強める中、海軍や空軍、ロケット軍の装備更新や、宇宙、サイバー、人工知能 (AI) といった新領域での能力構築を加速させる狙いがある。南シナ海や東シナ海での活動活発化も、この軍備増強が背景にある。

日本への影響と示唆

中国が2024年の経済成長率目標を「5%前後」に設定しつつ、国防費を7.2%増の1兆6655億元(約34兆8000億円)に引き上げたことは、日本企業にとって複雑な影響を及ぼす。

まず、経済成長目標の維持は、中国市場の規模が引き続き拡大することを示唆する。特に、都市部の新規雇用者数目標が1200万人以上とされたことは、個人消費市場の潜在的成長力を維持する要因となる。しかし、不動産不況や地方政府の債務問題が解消されなければ、内需の伸びは限定的となり、日本からの消費財輸出や現地生産の伸び悩みに繋がる可能性がある。例えば、中国に進出する日本の自動車メーカーや家電メーカーは、販売戦略において都市部中間層の購買力回復度合いを慎重に見極める必要がある。

次に、国防費の継続的な増額は、地政学的リスクの高まりを意味する。特に、新華社通信が報じる宇宙、サイバー、AIといった新領域での能力構築加速は、日本のサプライチェーンに新たなリスクをもたらす。例えば、中国がこれらの分野で軍民融合を一層推進すれば、先端技術を扱う日本企業は、輸出管理規制の強化や技術流出リスクへの対応を迫られる。また、南シナ海や東シナ海での活動活発化は、海上輸送ルートの不安定化を招き、日本の物流コスト増加やサプライチェーンの寸断リスクを高める。日本の海運会社や製造業は、代替ルートの確保や在庫戦略の見直しを検討すべきだろう。