中国の王文濤(おう・ぶんとう)商務相は、2023年の社会消費財小売総額が年間で初めて50兆元(約1000兆円)を突破するとの見通しを明らかにした。政府は内需拡大を経済成長の柱と位置づけ、対外開放と両立させる「質の高い発展」を目指す。

小売総額50兆元突破、内需拡大を加速

中国商務省によると、2023年1〜11月期の社会消費財小売総額は前年同期比4.0%増加した。この結果、年間総額は初めて50兆元の大台を超える見込みだ。王商務相は、2023年に中国の消費市場が新たな段階に入ったと評価。2024年はサービス消費や地方都市・農村部における消費の潜在力をさらに引き出す方針を示した。

これは、2023年12月に開催された中央経済業務会議で示された「内需拡大に重点を置く」という方針に沿ったものだ。政府は消費を経済成長の安定的な原動力とすべく、政策を総動員して市場の活性化を推進する。

対外貿易も堅調、45兆元超え

内需拡大と並行し、対外貿易も堅調さを維持している。王氏によると、2023年の物品貿易輸出入総額は初めて45兆元を突破し、前年比3.8%増となった。世界経済の減速懸念がある中でも、中国の貿易規模は拡大を続けている。

習近平総書記はかねてより、内需拡大戦略の実施が中国経済の健全な長期発展に不可欠であると指摘する一方、高水準の対外開放を堅持し、多様な市場と資源を積極的に活用する重要性を強調してきた。新華社通信などが伝えたところによると、政府は国内大循環を主体としつつ、国内と国際の二つの循環が相互に促進し合う「双循環」モデルの構築を急いでいる。

日本市場への影響

中国の社会消費財小売総額が初の50兆元突破という事実は、日本企業にとって二つの明確な機会と一つのリスクを示す。

第一に、小売総額50兆元超えは、中国国内の消費市場が依然として巨大な潜在力を秘めていることを裏付ける。特に、王文濤商務相が言及したサービス消費や地方都市・農村部における消費の潜在力は、日本の消費財メーカーやサービス業にとって新たな販路開拓の好機となる。例えば、ユニクロや無印良品といったライフスタイルブランドは、地方都市の所得向上と消費志向の変化に対応した商品戦略を強化することで、さらなる成長を期待できる。

第二に、物品貿易輸出入総額が45兆元を超え、前年比3.8%増という堅調な伸びは、サプライチェーンにおける中国の重要性が揺るがないことを示唆する。日本企業は、中国を単なる消費市場としてだけでなく、生産拠点および部品供給元としての位置づけを再評価すべきだ。例えば、トヨタ自動車のような完成車メーカーは、中国国内の部品調達網をさらに深化させることで、地政学リスクを分散しつつ効率的な生産体制を維持できる。

一方で、内需主導への転換は、中国経済の自立性を高める動きであり、日本からの輸入依存度を低下させるリスクも孕む。特に、中国が自国内での技術開発や生産能力を強化する分野では、日本からの輸出が頭打ちになる可能性も考慮する必要がある。これは、日本の高機能部品メーカーや素材メーカーにとって、中国市場での競争激化を意味する。