中国・江西省南昌市は、ギグワーカーなど新たな就業形態の労働者に対する支援を拡大し、労働・生活環境の改善を進めている。近年、同市はこうした労働者が働きやすい環境整備に注力し、きめ細やかなサービスを提供することで、都市運営の質向上を図っている。
医療費補助など78プロジェクトの支援策
市は労働者支援を強化するため、78プロジェクトにわたる手厚い支援策を打ち出している。一例として、物流会社の配達員である李磊氏は2024年夏、配達業務中に熱中症で倒れ、15万元(約300万円)あまりの医療費が発生した。しかし、市の支援制度を利用し、費用の大部分を賄うことができたという。
休憩所や駐車スペースも整備
労働環境改善の一環として、市は配達員向けの休憩所「ライダーズステーション」を市内に80カ所設置した。また、配達用の車両向けに専用の優先駐車スペースを356台分確保している。
さらに、市内2153カ所のコミュニティサービスセンターをこれらの労働者に無料開放するなど、都市全体で包摂的な環境づくりを進めていると、地元メディアは伝えている。
日本の関連性
南昌市がギグワーカー支援を強化する動きは、日本企業にとって事業展開における新たなリスクと機会を示唆する。まず、中国における労働者保護の動きが地方政府主導で具体化している点は、日本企業が中国でギグエコノミー関連事業を展開する際のコスト増要因となる。南昌市が78プロジェクトもの支援策を打ち出し、李磊氏の15万元(約300万円)の医療費を補助した事例は、企業が負担する社会保障費や福利厚生費が増加する可能性を示唆する。これは、フードデリバリーや物流といったギグワーカーに依存する事業モデルにおいて、収益性を圧迫するリスクとなる。
次に、ライダーズステーション80カ所の設置や356台分の優先駐車スペース確保といったインフラ整備は、中国市場における競争環境の変化を招く可能性がある。地方政府が労働環境改善に積極的に関与することで、ギグワーカーの定着率向上や労働意欲の維持に繋がり、結果としてサービス品質の安定化に寄与する。これは、政府の支援を受けられない、あるいは支援が手薄な地域で事業展開する日本企業にとって、人材確保やサービス品質維持の面で不利に働く可能性がある。
しかし、この動きは新たなビジネス機会も生み出す。例えば、ギグワーカー向けの保険商品や福利厚生サービス、あるいはライダーズステーションの運営・管理といった分野で、日本のノウハウや技術が活かせる可能性がある。南昌市のように政府が主導して労働環境改善に取り組む地域では、関連サービスへの需要が高まることが予想され、日本企業が新たな市場を開拓するチャンスとなり得る。