中国がエネルギーの安全保障と効率的な供給体制の確立を急いでいる。その中核をなすのが、全国規模の天然ガスパイプライン網「全国一張網」の建設計画だ。2月28日、総投資額300億元(約6兆3000億円)を超える3つの主にパイプラインが同時に着工し、計画が新たな段階に入った。

3つの主にパイプラインが同時着工

今回着工したのは、国家石油天然ガスインフラの重点プロジェクトである「蘇皖豫(そかんよ)幹線」「文23―安慶天然ガスパイプライン」「山東パイプライン網北幹線(第1期)」の3つ。江蘇省、安徽省、河南省、山東省にまたがる広大な地域で建設が始まった。これらのプロジェクトは、全国的なパイプライン網の戦略的配置を整備し、地域のエネルギー構造転換と経済の「質の高い発展」を推進する上で重要な役割を担う。

  • 蘇皖豫幹線: 江蘇省から河南省までを結ぶ全長822.5km。年間設計輸送能力は183億立方メートル
  • 文23―安慶パイプライン: 北部のガスを南部に送る重要ルート。全長645.5kmで、年間設計輸送能力は150億立方メートル(将来的には253億立方メートルに拡張予定)。
  • 山東パイプライン網北幹線(第1期): 全長257km。年間設計輸送能力は118億立方メートル

最新技術で建設を効率化

建設を担う国家石油天然ガスパイプライン網集団 (PipeChina) は、最新技術を導入し、建設の効率化と品質向上を図っている。フレキシブル内部溶接ロボットの活用や、全自動超音波探傷検査 (AUT) の採用により、施工速度と安全性を両立。また、ステーションやバルブ室の建設ではモジュール工法を導入し、敷地面積を10%~20%削減しながら施工効率を高めている。

PipeChinaは「第15次五カ年計画」(2026~2030年)の開始を見拠え、エネルギーインフラへの投資を拡大している。新華社通信が伝えたところによると、今回の大型投資は鉄鋼や設備製造など川上・川下の関連産業の発展を促し、エネルギー強国建設に強力な弾みをつけるものとなる。

日本への影響と今後の展望

中国の天然ガス網「全国一張網」建設加速は、日本にとって複数の具体的な影響をもたらす。まず、中国国内のガス供給安定化は、液化天然ガス(LNG)市場における日本の調達戦略に影響を与えうる。中国が国内供給能力を強化し、特に蘇皖豫幹線が年間183億立方メートル、文23―安慶パイプラインが年間150億立方メートル(将来的には253億立方メートルに拡張予定)もの輸送能力を持つことで、中国のLNG輸入需要の変動がより予測可能になる可能性がある。これにより、日本企業はスポット市場での価格競争激化リスクを軽減し、長期契約の再交渉において有利な立場を築く機会が生まれる。

次に、PipeChinaが導入するフレキシブル内部溶接ロボットや全自動超音波探傷検査(AUT)といった最新技術は、日本のインフラ関連企業にとって新たな市場機会を提供する。中国の巨大なインフラ投資は、高品質な建設機械や検査機器への需要を生み出すため、日本の重工業メーカーや精密機械メーカーは、これらの技術分野での連携や部品供給を模索すべきだ。

最後に、中国がエネルギー安全保障を強化し、国内インフラ投資を拡大することは、日本のエネルギー政策にも示唆を与える。中国が国内資源活用とパイプライン網整備を急ぐ背景には、国際情勢の不確実性やサプライチェーンの脆弱性への懸念がある。日本も同様にエネルギー自給率向上や、多様な供給源確保に向けたインフラ投資の重要性を再認識し、国内のガスパイプライン網の弾力性強化を検討する契機となる。