中国政府が、2030年までのカーボンピークアウトと2060年までのカーボンニュートラル達成を目指す「双炭」目標に向け、エネルギー政策を加速させている。再生可能エネルギー(再エネ)の導入を強力に推進し、その設備容量は国内総発電設備容量の半分を突破した。一方で、エネルギー安全保障を最優先課題とし、石炭火力の役割を維持する現実的なアプローチも取っている。

再エネ導入で世界を牽引

中国の再エネ導入ペースは他国を圧倒している。国家能源局の発表によると、2023年末時点で、太陽光や風力など再エネの総設備容量は 15億1600万kW に達し、初めて総設備容量の 50% を超えた。特に太陽光パネルと風力タービンの生産・設置量では世界市場の大部分を占める。

この背景には、政府主導の強力な産業政策と巨額の投資がある。新エネルギー車(NEV)の分野でも、国内販売台数と輸出が急増しており、車載電池を含めたサプライチェーン全体で国際的な競争力を高めている。

エネルギー安保と石炭火力の両立

再エネの導入を急ぐ一方で、中国はエネルギー安全保障の観点から石炭火力を依然として重要なベースロード電源と位置付けている。「先立後破(新しいものを確立してから古いものを壊す)」の方針の下、経済成長を支える安定的な電力供給を確保するため、国内の石炭生産を拡大し、一部では高効率な石炭火力発電所の新設も承認している。

この現実的なアプローチは、エネルギー供給の安定性を最優先する中国政府の姿勢を反映したものだ。ロシアによるウクライナ侵攻後の世界的なエネルギー価格高騰も、国内資源である石炭の重要性を再認識させる契機となったと、新華社通信は伝えている。

日本にとっての意味

中国の再エネ設備容量が総発電設備の50%を超え、特に太陽光・風力で世界をリードする状況は、日本のサプライチェーンに複数の影響をもたらす。まず、中国が2023年末時点で再エネ総設備容量15億1600万kWを達成した事実は、太陽光パネルや風力タービンの国際価格に下押し圧力をかけ続けることを示唆する。これは、日本の再エネ導入コスト削減に寄与する一方で、国内メーカーが中国勢との価格競争に直面し、事業再編を迫られるリスクがある。

次に、中国がNEV分野で車載電池を含めたサプライチェーン全体で競争力を高めている点は、日本の自動車産業にとって大きな脅威となる。中国製EVの性能向上と低価格化が進めば、国際市場での競争が激化し、日本の自動車メーカーは電動化戦略の加速と、電池技術を含むサプライチェーンの再構築を急ぐ必要がある。

最後に、中国がエネルギー安全保障を理由に石炭火力を維持し、「先立後破」の方針を取ることは、日本の脱炭素目標達成への間接的な影響も考えられる。中国の石炭消費が続く限り、アジア全体の排出量削減目標達成が困難になり、日本の排出量削減努力が相対的に見えにくくなる可能性もある。これは、日本の国際的な気候変動対策における立ち位置にも影響を与えうる。