中国の国有石油化学大手、中国石化(シノペック)(シノペック)は、中国中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ)がこのほど主催した「中国ESGガラ」で、「年間模範企業」として表彰された。同社の侯啓軍会長は式典に出席し、ESG(環境・社会・ガバナンス)分野における優れた取り組みを紹介した。

エネルギー転換とガバナンス強化を評価

シノペックは「第14次五カ年計画」(2021〜2025年)期間中、ESGの各分野で実績を上げてきた。特に、グリーン・低炭素化、安全性、責任ある経営を柱とする質の高い発展方針を推進。企業統治においては、中国の特色ある現代的企業制度の整備を進め、ガバナンス効率とコンプライアンス経営の水準向上に取り組んできたと強調した。

同社はエネルギー転換を積極的に進めており、化石エネルギーのクリーンな利用、クリーンエネルギー事業の規模拡大、生産プロセスの低炭素化という3つの柱を推進している。株主への還元も重視する姿勢を示している。

CCUSなど脱炭素技術で先行

シノペックは脱炭素化に向けた具体的な成果も上げている。2020年には初のクリーンエネルギー開発計画を発表。2022年には、中国初の大規模なCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)プロジェクトを完了させたと、新華社通信は伝えている。こうした先進的な取り組みが、今回の受賞につながったとみられる。

今後もシノペックは、イノベーション主導、事業転換と高度化、資源確保、市場開拓、コストリーダーシップ、国際協力の6つの戦略を推進する計画だ。ESGガバナンスをさらに強化し、経済・社会の持続可能な発展に貢献することを目指すとしている。

日本企業への示唆

シノペックが中国中央広播電視総台のESGアワードで「年間模範企業」に選ばれたことは、日本企業にとって複数の影響と機会をもたらす。まず、シノペックが「中国の特色ある現代的企業制度の整備」を強調し、ESGガバナンス強化を掲げている点は、中国市場で事業を展開する日本企業に対し、中国政府が推進する独自のESG基準への適応を促す。日本のサプライチェーンに関わる中国企業が、この「特色ある」ガバナンス基準に準拠する可能性があり、日本企業は取引先のESG評価において、国際的な基準だけでなく中国独自の基準も考慮する必要が生じる。

次に、シノペックが「中国初の大規模なCCUSプロジェクトを完了」させたという事実は、中国が脱炭素技術開発に国家レベルで注力していることを示す。これは、日本のCCUS関連技術を持つ企業にとって、中国市場での協業や技術供与の機会となり得る。例えば、東芝や三菱重工業のようなプラントメーカーは、中国のエネルギー大手との連携を通じて、新たなビジネスチャンスを創出できる可能性がある。

しかし、シノペックが化石燃料企業であるにもかかわらずESGアワードを受賞したことは、中国における「グリーン」の定義が、国際的な基準と乖離する可能性を示唆する。日本企業が中国市場でESG投資やグリーンファイナンスを検討する際、中国政府が推進する「グリーン」の概念と、国際社会が求める厳格な基準との間で、認識のズレが生じるリスクがある。これにより、日本企業は中国での事業活動が、国際的なESG評価機関から「グリーンウォッシュ」と見なされるリスクを回避するため、より慎重なデューデリジェンスが求められる。