中国の深圳証券取引所に開設されている新興企業向け市場、創業板(ChiNext)の株価指数が、約10年ぶりの高値水準である3500ポイントを再び回復し、市場の注目を集めている。今回の上昇は、AI(人工知能)や新エネルギー分野における堅調な産業動向と、政府による構造的な市場改革が組み合わさった結果と分析されている。
過去のピークとは異なる上昇の質
ChiNext指数が3500ポイントを超えたのは、2015年の「インターネット・プラス」ブームと、2021年の新エネルギーブームの局面以来だ。しかし、当時の市場環境は現在と大きく異なる。2015年6月には、モバイルインターネット関連銘柄を中心に株価収益率(PER)が140倍近くまで高騰し、実体経済からかけ離れたバブル状態だった。
2021年末の3500ポイント到達時も、新エネルギー産業への過度な期待が先行した側面が強い。これに対し、今回は「新質生産力」と呼ばれるハイエンド製造業や新エネルギーなど、新たな成長分野の比重が高まっている。より分散された収益構造と、堅実な業績成長に裏打ちされているのが特徴だ。
産業トレンドと政策が両輪に
今回の上昇を支える要因は、好調な産業動向と政策支援の2つだ。産業面では、AIインフラに不可欠な800G光モジュールの大量出荷や1.6T製品の商用化が加速し、通信・電子セクターの企業業績が急成長している。また、AIの計算能力の増強に伴いエネルギー効率の向上が求められる中、蓄電分野の需要も急増しており、両セクターが指数を力強く牽引している。
政策面では、創業板の制度改革が発表され、IPO(新規株式公開)の審査基準が見直された。これにより、より質の高い革新的な企業の上場が促され、市場全体の質的向上と中長期的な成長への期待が高まっている。
今後の見通し
現在のChiNext指数のPERは約43倍で、過去10年間の中央値をわずかに上回る水準にあり、過去のピーク時と比較して合理的な範囲だ。業績成長が株価を支える健全な上昇局面であり、持続性が期待できるとの見方が多い。
現在は企業の決算発表シーズンにあたり、構成企業の好業績が相次いで確認されている。外部環境の安定化や投資家心理の改善、改革による制度的恩恵も加わり、指数の上昇トレンドは継続する可能性がある。ある国内メディアは、個人投資家にとって「E Fund ChiNext ETF(159915)」などの関連ファンドが、この成長トレンドを捉える主な投資手段となっていると伝えた。
日本市場への影響
今回のChiNext指数の3500ポイント再到達は、日本企業にとって中国の新興市場における競争環境の変化と新たな事業機会を示唆する。まず、AIインフラに不可欠な800G光モジュールの大量出荷や1.6T製品の商用化といった中国企業の技術力向上は、日本の電子部品メーカーにとって脅威であると同時に、協業の可能性も生み出す。例えば、日本の村田製作所やTDKといった企業は、中国のAI関連企業が求める高機能部品の供給で引き続き優位性を保てるか、あるいは中国国内サプライヤーの台頭により競争が激化するのか、その動向を注視する必要がある。
次に、新エネルギー分野における中国の成長は、日本の再生可能エネルギー関連企業にとって新たな市場開拓の機会となりうる。中国の蓄電分野の需要急増は、日本の蓄電池技術を持つ企業、例えばパナソニックやGSユアサにとって、中国市場への部品供給や技術提携を通じて事業を拡大するチャンスとなり得る。
最後に、創業板のIPO審査基準見直しは、中国市場への参入を検討する日本スタートアップ企業にとって、より質の高いパートナー企業を見つけやすくなる可能性を示唆する。ただし、日本企業が中国市場で競争優位性を確立するためには、単なる製品供給に留まらず、中国の「新質生産力」政策が推進するハイエンド製造業や新エネルギー分野における技術革新に積極的に関与し、中国企業との協業モデルを模索することが不可欠となる。