中国の住宅リフォーム業界で、新たな変革の動きが始まった。市場規模が巨大であるにもかかわらず、既存の大手企業が苦戦する中、EC最大手Alibaba(Alibaba集団)の元幹部である馬学軍氏が新会社を設立。業界のデジタル化と構造改革に乗り出した。
巨大市場で苦戦する既存大手
中国の住宅リフォーム市場は、2025年に6.2兆〜6.5兆元(約124兆〜130兆円)に達すると見込まれる巨大市場だ。しかし、その規模とは裏腹に業界の非効率性は根強く、大手企業の経営は厳しい。2026年初頭の決算では、住宅関連の上場企業24社が合計で240億元(約4800億円)もの純損失を計上したと報じられている。
これまでにも、AlibabaやJD.com(JD.com(京東)集団)、ByteDance(ByteDance)といったIT大手がこの市場に参入してきた。しかし、サプライチェーンの複雑さや施工品質のばらつきといった業界特有の課題が障壁となり、根本的な構造改革には至っていないのが現状だ。
Alibaba出身者が挑む業界変革
この状況を打破すべく立ち上がったのが、馬学軍氏だ。同氏は2010年にAlibabaへ入社後、Tmall(Tmall(天猫))のスーパーマーケット事業やヘルスケア事業、住宅リフォーム事業の立ち上げを主導した実績を持つ。Alibabaと投資ファンドの雲鋒基金(YF Capital)を経て、2020年6月に独立した。
馬氏が立ち上げた新プロジェクトが「Tmall設計家(Tmall(天猫)設計家)」だ。同社はCEOとして馬氏が率い、2025年8月にはAlibabaから数億元規模の投資を受けたと、中国メディアは伝えている。Tmallでの事業経験を活かし、設計から施工、家具販売までを統合したプラットフォームを構築することで、業界の非効率性を解消し、新たな顧客体験の創出を目指す。
日本にとっての意味
Alibaba元幹部による住宅リフォーム新会社設立は、日本の建材・住宅設備メーカーに新たな機会とリスクをもたらす。まず、馬学軍氏が率いる「Tmall設計家」が目指すサプライチェーンの統合とデジタル化は、日本の高品質な建材・設備メーカーにとって、中国市場への新たな販路となる可能性がある。特に、同社がAlibabaから数億元規模の投資を受け、Tmallでの事業経験を活かすことから、デジタルプラットフォームを通じた大規模な流通網へのアクセスが期待できる。
一方で、リスクも存在する。中国の住宅リフォーム市場は2025年に6.2兆〜6.5兆元に達する巨大市場でありながら、既存大手24社が240億元の純損失を計上するほど非効率性が根強い。これは、日本のメーカーがこの市場に参入する際、従来の商流や品質管理手法が通用しない可能性を示唆する。Tmall設計家のようなデジタルプラットフォームが台頭すれば、日本のメーカーは中間業者を介さず直接消費者や施工業者に製品を供給するモデルへの転換を迫られるかもしれない。
さらに、ByteDanceなどIT大手が過去に参入し成功していない点も考慮すべきだ。Tmall設計家がサプライチェーンの複雑性や施工品質のばらつきといった課題をどこまで克服できるか、その動向は日本のメーカーにとって、中国市場での新たなビジネスモデル構築のヒントとなるだろう。特に、日本の施工技術や品質管理ノウハウが、Tmall設計家のプラットフォームと連携することで、中国市場における競争優位性を確立できる可能性も秘めている。