中国の水素エネルギー産業が、2030年の価格目標達成に向け、コスト削減という大きな課題に直面している。中国水素エネルギー連盟研究院のデータによると、2025年6月末時点での水素価格は生産側で約27.5元/kg、消費者側で約45元/kgと高止まりしている。製造コストの6割を占める電力コストの低減が鍵を握る。
市場主導への転換と価格目標
中国の水素エネルギー産業は現在、政策主導から市場主導への転換期にある。中国政府は2030年までに、最終消費段階での水素平均価格を1kgあたり25元(約525円)以下に引き下げる目標を掲げている。しかし、現状の価格水準では目標達成は困難視されているのが実情だ。
コスト増の要因:再エネの不安定性
コスト削減の最大の障壁は、再生可能エネルギーの出力変動だ。風力・太陽光発電の断続的な性質が、水を電気分解して水素を製造する電解槽の稼働率を低下させ、結果として減価償却費を押し上げている。東華工程科学技術(East China Engineering Science and Technology)の技術総監督は、「グリーン電力の直接コストは低くても、発電の不安定さが設備稼働率を下げ、コスト増につながっている」と指摘する。
解決策としてのオフグリッド水素製造
この課題を克服するため、電力系統から独立した「オフグリッド」での水素製造が注目されている。風力・太陽光発電と直接接続し、蓄電や水素貯蔵を組み合わせた独立型マイクロエネルギーシステムを構築することで、電力コストの削減が期待される。国家エネルギー局は、遼寧省鉄嶺市での「オフグリッド風力発電・蓄電・水素製造統合プロジェクト」などを先進的な実証事業として選定し、普及を後押ししていると新華社通信は伝えた。
日本企業への示唆
中国の水素産業におけるコスト削減努力は、日本の産業界にとって複数の具体的な影響と機会をもたらす。まず、中国が2030年までに最終消費段階での水素価格を1kgあたり25元以下に引き下げる目標を掲げている点は、日本企業が中国市場で競争する上で無視できない。現状の生産側27.5元/kgという価格から目標達成には、製造コストの6割を占める電力コストのさらなる低減が不可欠であり、日本の水素関連技術、特に電解槽や関連機器メーカーにとっては、中国市場での価格競争激化が予想される。
しかし、これは同時に新たな事業機会も生み出す。東華工程科学技術(East China Engineering Science and Technology)が指摘する再生可能エネルギーの不安定性による設備稼働率低下の問題は、日本の電力制御技術や蓄電池技術、あるいは水素貯蔵技術に対する需要を高める可能性がある。オフグリッド水素製造が活路とされている中で、独立型マイクロエネルギーシステムの構築ノウハウを持つ日本企業は、中国の「オフグリッド風力発電・蓄電・水素製造統合プロジェクト」のような実証事業への技術供与や共同開発を通じて、新たなビジネスチャンスを掴める。例えば、パナソニックや東芝のような蓄電池技術を持つ企業は、中国の再エネ水素製造における不安定性課題の解決に貢献し、市場を拡大できる。また、中国が政策主導から市場主導へと転換する中で、日本の先行する水素関連技術やサプライチェーン構築の知見は、中国企業との連携を通じて、新たな価値創造に繋がる可能性を秘めている。