中国の興業銀行は3月26日、2024年通期の連結決算を発表した。総資産は前年比5.58%増の11兆900億元(約235兆円)に達し、営業収益と純利益も増加した。不良債権比率は改善しており、資産の健全化が進んでいることが示された。
2024年通期は増収増益、資産規模は11兆元超え
同行が発表した2024年通期決算によると、営業収益は前年比0.24%増の2,127億4,100万元、親会社株主に帰属する純利益は同0.34%増の774億6,900万元となった。総資産は11兆900億元に達し、中国の金融業界における存在感を維持している。
不良債権比率は改善、リスク管理を強化
資産の質を示す不良債権比率は1.08%となり、前年から改善した。同行は、重点分野におけるリスクを抑制するなど、全面的なリスク管理を強化した成果だと説明している。特に、クレジットカード事業における不良債権発生額は、高水準だった2022年以降、2年連続で減少した。
「不動産」から「科学技術」への事業モデル転換
興業銀行は2021年以降、従来の「不動産・インフラ・金融」という旧来の循環モデルから、「科学技術・産業・金融」を連携させる新たな循環モデルへの転換を推進してきた。今回の決算は、この戦略転換が着実に進んでいることを裏付けるものとなった。同行は今後もこの方針を継続し、持続的な成長と資産の質の向上を目指すとしている。
日本への影響と今後の展望
興業銀行の決算は、中国金融機関の構造転換が日本企業にもたらす具体的な影響を示唆する。まず、不良債権比率が1.08%に改善し、クレジットカード事業の不良債権発生額が2年連続で減少した点は、中国国内の消費市場の安定化を示す。これは、中国市場を主要ターゲットとする日本のアパレルや化粧品メーカーにとって、信用リスクの低下と販売機会の回復を意味する。特に、ユニクロや資生堂のような消費財大手は、この健全化の恩恵を受ける可能性がある。
次に、「不動産・インフラ・金融」から「科学技術・産業・金融」への事業モデル転換は、日本の産業界に新たな連携の機会をもたらす。興業銀行が科学技術分野への融資を強化する中で、日本の半導体製造装置メーカーや精密機器メーカーは、中国の先端産業企業との協業や部品供給の拡大を模索できる。例えば、東京エレクトロンやSCREENホールディングスのような企業は、中国の技術革新を支える形でビジネスチャンスを拡大できるだろう。
一方で、総資産が11兆900億元に達し、中国金融業界での存在感を維持していることは、中国経済の規模と潜在的な影響力を改めて示す。これは、日本企業が中国市場から撤退する際、資金回収や事業売却において、中国の巨大金融機関との交渉が不可避となる可能性を意味する。また、中国の金融機関が海外展開を加速した場合、日本の金融機関との競合が激化するリスクも考慮すべきだ。