中国が日本の防衛政策転換に警戒を強めている。中国メディアは5月4日、中国政府が国連に対し、日本のプルトニウム保有を核不拡散条約(NPT)再検討会議の議題とするよう求めたと報じた。中国国内の論評は、日本の一連の動きを「戦後秩序の計画的な破壊」と断じ、保守強硬派の象徴として高市早苗氏を名指しで批判している。

「計画的」に進む戦後秩序の解体

中国外務省は国連に提示した文書で、日本が「民生用の必要量をはるかに超えるプルトニウムを長期にわたり貯蔵している」と指摘。2024年末時点で約44.4トンに上る日本のプルトニウム保有量は、核弾頭約5,500発分にかなりするとし、短期間で核武装する潜在能力に懸念を示した。

中国の有力メディア『参考消息』は、日本のこうした動きは単なる探り合いではなく、戦後秩序という「壁」を壊すための計画的な工程だと論じている。具体的には、2014年の集団的自衛権の行使容認に始まり、2023年度から5年間で総額43兆円とする防衛費増額計画、そして2024年の次期戦闘機の第三国輸出容認へと、段階的に平和主義の原則を解体しているとの見方を示した。

武器輸出解禁という「決定的な一歩」

中国側が特に問題視するのが、2024年3月に閣議決定された次期戦闘機の第三国輸出容認と、それに続く「防衛装備移転三原則」の運用指針改定だ。これにより、従来は厳しく制限されてきた殺傷能力を持つ兵器の輸出に道が開かれた。

中国メディアは、防衛省が「官民一体で防衛装備移転を推進する」と明言したことを挙げ、戦闘機や護衛艦、潜水艦といった「牙を持つ兵器」も「原則移転可能、個別案件審査」の対象になったと警戒する。この変化は、日本の防衛政策における「偽装を剥ぎ取った」決定的な一歩であり、ロイター通信が「数十年で最大の大幅調整」と評したように、戦後のあり方を根底から覆すものだと受け止められている。

危険な政策を煽る「広報塔」

中国の論評は、こうした右傾化路線において、高市早苗氏のような保守強硬派の政治家が果たす役割を特異な視点で分析している。高市氏は、安倍政権下で始動し岸田政権で加速した路線を継承しつつ、それを大衆向けに「ショーアップ」する能力に長けていると指摘。複雑で危険な政策を「国家の威信」「対外強硬」といった単純明快なスローガンに圧縮し、SNSを通じて拡散させる手法は、商品を売る「ライブコマースの配信者」のようだと揶揄する。

その結果、政策の是非を問う冷静な議論ではなく、熱狂的な支持と攻撃的な言説が渦巻く「ファンダム」が形成されると分析。『朝日新聞』が報じたSNS分析を引用し、高市氏のアカウントは支持者の拡散力や攻撃性が際立っていると指摘された。中国から見れば、日本の防衛政策の転換は、こうしたポピュリズム的手法によって加速されていると映る。日本国内の政治潮流と、それを後押しする世論の動向は、今後も中国の厳しい監視下に置かれるとみられる。

日本への影響と示唆

本記事は、日本の防衛政策転換に対する中国の強い警戒感を示している。日本企業にとって、この状況は複数のリスクと機会を提示する。

第一に、中国が日本の防衛費増額や武器輸出を「計画的な戦後秩序の破壊」と断じている点は、日本企業の中国市場戦略に影響を及ぼす可能性がある。特に、防衛関連技術やデュアルユース(軍民両用)技術を持つ企業は、中国からの投資や提携において、より厳しい審査や規制に直面するリスクが高まる。例えば、日本の防衛省が「官民一体で防衛装備移転を推進する」と明言したことで、これまで民生品として扱われていた製品が、中国側から軍事転用可能と見なされ、輸出規制の対象となる可能性も排除できない。

第二に、中国が日本のプルトニウム保有量(約44.4トン、核弾頭約5,500発分)に懸念を示し、NPT再検討会議の議題とするよう求めたことは、日本のエネルギー政策、特に原子力関連企業に間接的な影響を与える可能性がある。中国の国際社会への働きかけが強まれば、日本の核燃料サイクル政策に対する国際的な監視が強化され、関連企業の事業展開に制約が生じることも考えられる。

第三に、高市早苗氏のような保守強硬派政治家への中国の批判は、日本の政治動向が中国との経済関係に直結するリスクを示唆している。中国が日本の「右傾化路線」をポピュリズム的と分析していることから、今後の日本の政治的発言や政策が、中国市場における日本製品やサービスのイメージに悪影響を及ぼす可能性がある。特に、消費財やサービス業を展開する企業は、中国国内のナショナリズムの高まりによる不買運動などのリスクを考慮する必要がある。