中国の豚肉価格が低迷している。2024年4月3日、国内の豚肉先物の主に限月価格は1トンあたり9,370元まで下落し、上場来の最安値を更新した。現物市場でも、生体豚の出荷平均価格が1kgあたり10元を割り込み、過去10年あまりで最も低い水準となっている。供給過剰と需要の伸び悩みが、業界全体を圧迫している。
供給過剰と需要低迷の二重苦
価格低迷の背景には、供給と需要のミスマッチがある。数年前に大きな被害をもたらしたアフリカ豚熱(ASF)からの回復過程で、各社が生産能力を大幅に増強した結果、市場は供給過剰の状態に陥った。一方で、景気減速の影響で消費者の節約志向が強まり、豚肉需要は伸び悩んでいる。
この状況は、養豚業界にとって極めて厳しい経営環境を生み出している。多くの養豚農家が、生産コストを販売価格が下回る「採算割れ」の状態で出荷を余儀なくされており、業界全体で赤字が拡大していると、複数の中国メディアが報じている。
政府介入も効果は限定的
事態を重く見た中国政府は、価格の下支えを目的として、2024年に入ってから国家備蓄として豚肉の買い入れを2度にわたり実施した。しかし、市場の巨大な供給量に対して介入規模は限定的であり、価格の本格的な回復には至っていない。
業界の構造的な問題も指摘されている。大規模な資本が参入したことで過当競争が激化しており、価格変動のサイクルがより不安定になっているとの分析もある。根本的な需給バランスが改善されない限り、養豚農家の苦境は当面続くとみられる。
日本にとっての意味
中国の豚肉価格低迷は、日本経済に直接的な影響を与える可能性は低いが、間接的な示唆は複数ある。第一に、中国の養豚業界で大規模な過剰生産と採算割れが常態化すれば、中国国内の消費財市場全体のデフレ圧力が強まる。これは、中国市場を主要ターゲットとする日本の食品メーカーや小売企業にとって、販売価格の維持が困難になり、収益性の悪化を招くリスクがある。
第二に、中国政府が国家備蓄による買い入れで価格下支えを図るも、現物市場の生体豚価格が1kgあたり10元を割り込むなど、効果は限定的である。これは、中国政府の市場介入能力にも限界があることを示唆しており、今後、他の産業分野でも同様の過剰生産問題が発生した場合、日本企業は政府の支援を過度に期待せず、自社の事業戦略を見直す必要性を突きつける。特に、中国国内の過剰生産能力が輸出に転じる場合、日本の同業他社との価格競争が激化する恐れがある。
第三に、アフリカ豚熱(ASF)からの回復過程で各社が生産能力を大幅に増強した結果、供給過剰に陥った経緯は、パンデミック後の需要回復を見越した過剰投資が、市場の需給バランスを崩す典型例と言える。日本企業も、半導体やEV関連など、成長が期待される分野への投資を検討する際、中国市場の動向を過度に楽観視せず、供給過剰リスクを慎重に見極めるべきである。