中国・湖北省で、70歳の農家、周功寿氏がライブコマースを通じて特産品のネーブルオレンジを販売し、注目を集めている。2021年に配信を開始し、現在ではフォロワー数が1.2万人に達するなど、電子商取引(EC)が中国の農村部で生活を大きく変えている実態を示す事例となっている。
70歳でライブコマースに挑戦
伝統的な農業が中心だった中国の農村部で、近年ECが農家の生活に大きな変化をもたらしている。特にライブコマースは、農家が自ら商品を宣伝・販売する新たな手段として急速に普及している。周氏は、農業一筋で他の仕事の経験はなかったが、2021年に一念発起し、自治体が提供する無料の研修講座に参加してライブコマースの技術を習得した。
配信開始当初は視聴者が少なかったものの、地道な努力が実を結び、徐々に人気を獲得。新華社通信によると、今年5月には春季収穫の「黒美人」ネーブルオレンジを販売し、県内で第2位の販売実績を達成した。周氏の挑戦は、ライブコマースが農家のあり方を変える新たな潮流を象徴している。
成功を支える物流インフラ
周氏の成功の背景には、個人の努力だけでなく、整備された物流網の存在が大きい。同氏が住む村では、宅配便の全村配達サービスが実現しており、集荷車両が毎日村を巡回して商品を集荷する体制が整っている。これにより、収穫したばかりの新鮮な果物を迅速に全国の消費者へ届けることが可能になった。
さらに周氏は、昨年末に専用の照明機材とマイクを導入し、配信の品質向上にも努めている。こうしたデジタル技術の活用と、それを支える物理的なインフラの組み合わせが、農村部におけるECビジネスの成功に不可欠な要素となっている。
まとめ:日本への示唆
中国農村部におけるライブコマースの普及は、日本の食品・農業関連企業に新たな事業機会と競争環境をもたらす。まず、周功寿氏のような高齢農家がフォロワー1.2万人を獲得し、ネーブルオレンジをライブ販売で成功させた事例は、中国消費者の購買行動がデジタルチャネルへ急速にシフトしていることを示す。これは、日本産農産物の中国市場開拓において、従来の卸売ルートに加え、ライブコマースプラットフォームを活用した直接販売の重要性が増すことを意味する。特に、高品質な日本産果物や加工食品は、ライブ配信による生産者の顔が見える販売手法と相性が良く、差別化戦略として有効だ。
次に、周氏の成功を支える「宅配便の全村配達サービス」に代表される中国農村部の物流インフラの高度化は、日本企業が中国農村市場へ参入する際の障壁を低減させる。例えば、日本の農業機械メーカーやスマート農業ソリューション提供企業は、この整備された物流網を介して、農村部への製品・サービスの供給を加速できる可能性がある。また、中国の農家がデジタル技術と物流インフラを組み合わせることで、農産物の付加価値を高め、都市部市場だけでなく、将来的には国際市場への展開も視野に入れるようになる。これは、日本市場における中国産農産物との競合激化を招く可能性があり、日本の農業セクターは品質向上とブランド戦略の強化を迫られるだろう。