中国の習近平(シー・チンピン)共産党総書記は10日、北京の人民大会堂で、台湾の野党・国民党の馬英九(マー・インチウ)前総統と会談した。習氏は、台湾独立や「外部勢力の干渉」に断固反対すると表明。5月に発足する頼清徳新政権を前に、中台は不可分とする「一つの中国」の原則を改めて強調した。

習氏「制度の違いは統一を阻めない」

中国中央テレビ(CCTV)によると、習氏は会談で「両岸(中台)の同胞はいずれも中国人だ。いかなる勢力も我々を引き離すことはできない」と述べた。さらに「制度の違いは、両岸が同じ国に属するという客観的な事実を変えることはできず、国家統一の実現を阻むことはできない」と強調し、平和統一への意欲を示した。

今回の会談は、習氏が2015年にシンガポールで当時総統だった馬氏と会談して以来、約9年ぶりとなる。習氏は、中台関係の平和的発展を推進したとして馬氏の貢献を評価し、国民党との連携を重視する姿勢をアピールした。

馬氏「戦争は耐え難い重荷」

一方、馬氏は「もし両岸で戦争が起きれば、中華民族にとって耐え難い重荷になる」と述べ、平和の重要性を訴えた。また、「両岸の中国人は、対立を平和的に処理し、衝突を避けるだけの十分にな知恵を持っている」と応じ、対話継続の必要性を強調した。

馬氏の訪中団は1日から中国を訪問しており、広東省や陝西省などを歴訪した後、北京で習氏との会談に臨んだ。この会談は、台湾で独立志向とされる民進党の頼清徳氏が5月20日に総統に就任するのを前に、中国側が台湾への懐柔と牽制を同時に行う狙いがあるとみられる。

日本への影響

今回の習近平氏と馬英九前総統の会談は、日本企業にとって台湾有事リスクの再評価を促す。特に、習氏が「制度の違いは、両岸が同じ国に属するという客観的な事実を変えることはできず、国家統一の実現を阻むことはできない」と強調した点は、中国が台湾の民主主義体制を統一の障害と見なさない可能性を示唆し、武力行使のハードルを下げる恐れがある。これにより、台湾に生産拠点を持つ日本の半導体関連企業や、台湾海峡を主要航路とする海運・物流企業は、サプライチェーン寸断や航路閉鎖のリスクを具体的に見積もり、代替ルートや生産拠点の分散計画を加速させる必要がある。

また、今回の会談が約9年ぶり、かつ頼清徳新政権発足を前に設定されたことは、中国が「一つの中国」原則の堅持を国際社会に強くアピールする意図があることを示している。これは、日本が台湾との経済関係を深化させる際に、中国からの政治的圧力が高まる可能性を意味する。特に、半導体製造装置メーカーや自動車部品メーカーなど、中国と台湾の両方に顧客を持つ企業は、サプライチェーンの透明性を高め、地政学リスクを考慮した事業継続計画(BCP)の策定が急務となる。中国市場の重要性を維持しつつ、台湾有事の際の影響を最小限に抑えるための具体的な戦略が求められる。