中国のウィンタースポーツ市場が急成長している。『2025年中国氷雪経済発展報告』によると、同国のウィンタースポーツ関連の市場規模は2016年の3647億元(約7.5兆円)から2024年には9800億元(約20兆円)に達した。年平均成長率は21.09%に上り、国産用品の台頭や国内での愛好者層の拡大が市場を牽引している。

市場規模、8年で2.7倍に急拡大

中国のウィンタースポーツ経済は、北京冬季五輪を契機に飛躍的な成長を遂げた。報告書によれば、市場規模はこの8年間で約2.7倍に拡大した。政府主導の普及政策と国民の所得向上を背景に、スキーやスノーボードが新たなレジャーとして定着しつつある。

国産スキー用品、価格競争力で攻勢

国産スキー用品の品質向上と価格競争力も市場拡大を後押ししている。吉林省の繊維大手、吉林化繊集団は、自社開発した炭素繊維を用いたスキー板の生産に成功。品質は海外の有名ブランドと同等でありながら、価格はその半額以下に抑えられており、国内の初心者から中級者を中心に人気を集めている。

スキー文化、温暖な南部にも浸透

従来、ウィンタースポーツは東北部など寒冷な地域が中心だったが、近年は温暖な南部でも普及が進んでいる。四川省成都市の西嶺雪山スキー場では、新たにナイター営業を開始。これにより、日中だけでなく夜間もスキーが楽しめるようになり、新たな顧客層の開拓につながっている。

日本への影響と示唆

中国のウィンタースポーツ市場の急拡大は、日本企業にとって新たな事業機会と同時に、競争激化のリスクをもたらす。まず、市場規模が2024年に9800億元に達し、年平均成長率21.09%という驚異的な伸びは、日本のスポーツ用品メーカーにとって魅力的な市場に見える。しかし、吉林化繊集団のような国産メーカーが、品質を維持しつつ海外有名ブランドの半額以下で製品を供給している事実は、価格競争力で劣る日本製品の苦戦を示唆する。特に、初心者層や所得層の低い顧客を取り込む上で、この価格差は決定的な障壁となり得る。

次に、四川省成都市の西嶺雪山スキー場におけるナイター営業開始に見られるように、ウィンタースポーツが温暖な南部地域にも浸透している点は、日本からのインバウンド需要に影響を与える可能性がある。これまで中国のウィンタースポーツ愛好家は、北海道や長野県などの日本のスキーリゾートを訪れる傾向があったが、国内での選択肢が増えることで、日本への渡航需要が減少するリスクがある。

最後に、日本のスキー場運営企業やリゾート開発企業は、中国の国産ブランドとの提携や、中国市場向けに特化したサービス開発を検討する必要がある。例えば、吉林化繊集団の製品を日本のスキー場でレンタルするなど、価格競争力のある国産品を逆輸入的に活用し、中国からの誘客を図る戦略も考えられる。単なる製品輸出だけでなく、サービスや体験価値の提供に軸足を移すことで、新たな収益源を確保できるだろう。