香港などで開催された主になWeb3カンファレンスにおいて、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)とRWA(実物資産のトークン化)の融合が主になテーマとして浮上している。物理世界のインフラや資産をブロックチェーン上で扱うこれらの技術は、中国の産業界で新たなユースケース創出への期待を集めている。

DePINとRWAが拓く新境地

DePINは、センサーや通信機器といった物理的なインフラの稼働状況や貢献度をブロックチェーンに記録し、トークンで報酬を与える仕組みだ。一方、RWAは不動産や美術品、債権といった現実世界の資産をトークン化し、ブロックチェーン上での取引を可能にする技術である。

この二つの技術が融合することで、例えば「太陽光発電所」という物理インフラ(DePIN)の発電量データと、「発電所自体」という資産価値(RWA)をブロックチェーン上で統合的に管理・取引できるようになる。これにより、インフラ投資やエネルギー取引の透明性と流動性が飛躍的に向上する可能性がある。

中国政府が後押し、産業界も注力

中国政府はブロックチェーン技術を国家戦略の重要分野と位置づけ、開発を積極的に推進している。この政策的後押しが、DePINやRWAといった応用技術の研究開発を加速させる大きな要因となっている。

産業界もこの潮流に注目している。多くの中国企業が、既存のビジネスモデルを変革し、新たな収益源を確保する手段としてDePINとRWAの技術開発に注力。物理世界とデジタル空間の境界を曖昧にし、より広範な経済活動をブロックチェーンに取り込む動きが活発化している。

専門家「物理とデジタルの連携が深化」

香港を拠点とするデジタル資産管理企業HashKey Groupの専門家は、DePINとRWAの融合がもたらすインパクトについて、「物理世界の資産とデータが、デジタル空間でシームレスに価値交換される時代の到来を意味する」と指摘した。中国の複数の技術系メディアも、この融合が次世代のインターネットであるWeb3の普及を大きく前進させる可能性があると報じている。

今後の焦点は、技術開発の進展に加え、異なるブロックチェーン間の相互運用性や、現実の法制度との整合性をいかに確保していくかだ。中国政府と企業は、この分野での標準化と実用化に向けた取り組みを加速させるとみられる。

日本市場への影響

DePINとRWAの融合は、日本企業にとって新たな競争環境とビジネスチャンスを提示する。まず、中国政府がブロックチェーン技術を国家戦略と位置づけ、DePINやRWAの研究開発を加速させている点は、日本企業が中国市場でインフラ関連事業を展開する上で看過できない。例えば、太陽光発電所のような物理インフラの発電量データと資産価値をブロックチェーン上で統合管理・取引可能にする技術は、中国国内のインフラ投資やエネルギー取引の透明性と流動性を飛躍的に向上させる。これは、日本のインフラ関連企業が中国での事業展開において、DePINやRWAを組み込んだ新たなビジネスモデルを構築する必要性を示唆する。

次に、この技術が既存のビジネスモデルを変革し、新たな収益源を確保する手段として多くの中国企業に注目されていることは、日本企業が自社のデジタル変革戦略を見直す契機となる。特に、製造業や不動産業界において、DePINとRWAを活用したサプライチェーンの透明化や資産の流動化は、競争優位性を生み出す可能性がある。

最後に、香港のHashKey Groupの専門家が指摘するように「物理世界の資産とデータが、デジタル空間でシームレスに価値交換される」時代が到来すれば、日本の金融機関やデータセンター事業者も、この技術動向を理解し、国際的な標準化や法制度の整合性確保に向けた議論に積極的に参画する必要がある。中国がこの分野で先行することで、将来的に技術標準やビジネス慣行が中国主導で形成されるリスクも考慮すべきである。