中国石油(ペトロチャイナ)化工集団(シノペック)傘下の勝利油田は、技術革新を通じて原油の増産と脱炭素化を両立させる取り組みを加速している。石油増進回収(EOR)技術で採掘率を高める一方、回収したCO2を油田に圧入・貯留するCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)プロジェクトを本格化させている。

石油増進回収(EOR)技術の高度化

勝利油田は中国東部の山東省に位置する国内第2位の油田だが、長期にわたる採掘で生産量が減少傾向にある。この課題に対応するため、研究員らは油層に特殊な化学剤を注入する「化学攻法」や、微生物の働きを利用する「微生物攻法」といったEOR技術の開発を推進してきた。

これらの技術は、岩盤の隙間に残った原油を効率的に回収するもので、従来の採掘方法では限界があった原油回収率を大幅に向上させることが可能だ。シノペックの発表によると、これにより数千万トン規模の追加採掘が見込まれるという。

国内最大級のCCUSプロジェクト

勝利油田は、脱炭素化の切り札としてCCUS技術の導入にも注力している。近隣の化学プラントなどから排出されたCO2を回収し、パイプラインで油田まで輸送。それを油層に圧入することで、原油の流動性を高めて回収を促進すると同時にに、CO2を地下深くに恒久的に貯留する。

このプロジェクトは、中国初の100万トン規模のCCUS実証事業であり、今後15年間で1,000万トン以上のCO2を貯留する計画だ。新華社通信は、この取り組みが中国の「2060年カーボンニュートラル」目標達成に向けた重要な一歩になると報じている。

日本企業への示唆

勝利油田におけるEORとCCUSの複合プロジェクトは、日本企業にとって複数の具体的な影響と機会をもたらす。まず、シノペックが数千万トン規模の追加採掘を見込むEOR技術の高度化は、日本が安定的な原油供給源を確保する上での選択肢を広げる。特に、従来採掘が困難だった油田からの回収率向上は、既存サプライチェーンの多様化に繋がりうる。

次に、中国初の100万トン規模のCCUS実証事業であり、今後15年間で1,000万トン以上のCO2を貯留する計画は、日本のCCUS関連技術・インフラ企業にとって具体的な連携機会を生む。例えば、CO2回収・輸送・貯留におけるプラント設計、パイプライン建設、モニタリング技術など、日本企業が強みを持つ分野での協業や部材供給の可能性が考えられる。勝利油田が「2060年カーボンニュートラル」目標達成に向けた重要な一歩と位置付けていることから、中国市場におけるCCUS技術の需要は今後も拡大が予想され、日本の関連技術を持つ企業は、この巨大市場への参入戦略を具体的に検討すべきだ。

さらに、このプロジェクトは、エネルギーと環境技術を融合させた中国の新たな産業モデルを示唆する。日本企業は、単なる製品供給に留まらず、中国の脱炭素化と資源確保の両立という国家戦略に合致するソリューション提供者としての立ち位置を確立することで、長期的なビジネス機会を創出できる可能性がある。