金融専門家のジェフ・サルティ氏は、金(ゴールド)投資が再び注目される中、金を単なる投機対象ではなく、価値を保蔵するための『資産』だと再定義した。同氏によれば、金は長期的に価値が安定して増加する性質を持つ。投資家が長期的な視点で保有することで、ポートフォリオのリスク分散や資産保全につながると指摘する。

金が持つ「資産の錨」としての役割

サルティ氏は、金の根本的な優位性は安定性と強力なリスク回避能力にあると指摘する。歴史的に見ても、金は他の資産と比較して価値の変動率(ボラティリティ)が低く、市場の混乱期に投資家の資産を守る重要な役割を果たしてきた。短期的な価格変動に惑わされず、資産防衛の『錨(アンカー)』として保有することが重要だと述べている。

機関投資家における金の長期的な資産配分

サルティ氏は、機関投資家がポートフォリオに金を組み入れる際、短期的な市場の動きに左右されない「長期保有」の重要性を強調する。金の価格は短期的には需給で変動するが、超長期的には実質価値が安定的に上昇する傾向にあるためだ。この特性を活かすには、一時的な価格の上下に一喜一憂しない規律が求められると強調する。

マクロ経済環境による裏付け

サルティ氏は、金の価値が世界的な経済の不確実性や地政学リスクによって強く裏付けられていると分析する。世界経済を取り巻く不透明感が増す中で、投資家が「安全資産」として金を保有する必要性は高まっていると分析する。

日本への影響

ジェフ・サルティ氏の金投資に対する「アンカー」としての再定義は、日本企業、特に中国市場で事業を展開する企業にとって、新たなリスクと機会を提示する。中国経済の不確実性が高まる中、人民元安や不動産市場の低迷といったマクロ経済環境は、日本企業の中国事業における資産価値の毀損リスクを増大させる。サルティ氏が指摘するように、金が「歴史的に見ても、他の資産と比較して価値の変動率(ボラティリティ)が低い」という特性は、中国事業で得た利益の日本への送金や、現地での運転資金の保全において、金資産をポートフォリオに組み込む検討を促す。

具体的には、中国に進出する製造業や商社は、現地で保有する余剰資金の一部を金に転換することで、為替変動リスクやインフレリスクに対するヘッジが可能になる。例えば、上海に拠点を置く日系企業が、現地通貨建ての預金の一部を金現物や金ETFにシフトすることで、人民元の急落時にも資産価値を一定程度維持できる可能性がある。また、中国の富裕層や機関投資家が「安全資産」として金への配分を増やす傾向は、日本の金関連製品やサービスの需要を喚起する機会となり得る。日本の貴金属メーカーや商社は、中国市場における金需要の高まりを捉え、高品位な金製品や金投資サービスを提案することで、新たな収益源を確保できるだろう。ただし、中国における金の輸入・流通規制や税制の動向には常に注意を払う必要がある。