2024年第1四半期(1~3月)、アゼルバイジャンやトルコなど複数の中央銀行が、保有する金準備の売却に踏み切った。地政学リスクや自国通貨安への対応が背景にあるとみられるが、専門家の間では長期的な金価格の上昇トレンドは変わらないとの見方が優勢だ。
一部中銀で金売却の動き
アゼルバイジャン国家石油基金(SWF)は、2012年以来で初となる金準備の売却に踏み切り、22トン超を放出した。同基金は世界の金市場における主にな買い手の一つだったが、資産構成に関する内規が背景にあるとみられる。継続的な売却につながる兆候は現時点ではないとの分析もある。
トルコは、中東情勢の緊迫化や自国通貨リラの下落を受け、直近2週間で過去最大となる約120トンの金を売却したと報じられた。関係者によると、売却分の一部は一時的に外貨を調達するスワップ取引に利用された。これは将来の買い戻しを前提とするため、恒久的な資産売却とは異なる。
このほか、ポーランド国立銀行は3月、国防費の財源として金準備の一部を売却する意向を表明。ロシア中央銀行も1月に30万オンス(約8.5トン)の金を売却し、2023年10月以来3カ月ぶりに金準備を減らした。
専門家は「脱ドル化」背景に長期上昇を予測
一部の国による短期的な売却の動きとは対照的に、世界の中央銀行全体では金の購入を超えるが続いている。世界ゴールドカウンシル(WGC)のデータによると、2024年3月末時点で、世界の中央銀行による金の純増量は215トンを超えた。
中国人民大学の金燦栄教授(国際問題専門)は4月24日の会議で、地政学リスクの高まりや米ドルへの信頼感低下を背景に、金は依然として魅力的な安全資産だと指摘。山東金集団のチーフアナリスト、姫明氏も、世界的なマクロ経済秩序の再編や「脱ドル化」の進展が金価格を押し上げる主な要因になっていると分析。「今後6~12カ月で金価格が史上最高値を更新する可能性もある」と予測したと、新華社通信は伝えている。
日本への影響
トルコやアゼルバイジャンの中央銀行が金売却に動いたことは、日本企業にとって短期的な金価格の変動要因となるが、より重要なのは「脱ドル化」の動きが加速している点だ。アゼルバイジャン国家石油基金が22トン超、トルコが120トンもの金を放出した背景には、自国通貨安や地政学リスクへの対応があり、これは新興国における外貨準備の脆弱性を露呈している。
日本企業は、新興国市場における為替リスクの再評価が不可欠となる。特に、トルコのようにスワップ取引で外貨を調達するケースは、一時的な市場の安定をもたらすものの、本質的な通貨安圧力は解消されていない。これにより、日本からの部品輸出や現地生産を行う企業は、予期せぬ為替変動による収益悪化リスクに直面する。
一方で、中国人民大学の金燦栄教授が指摘する「脱ドル化」は、長期的に円の相対的地位を押し上げる可能性を秘めている。世界ゴールドカウンシル(WGC)のデータが示すように、中央銀行全体の金純増量が215トンを超えていることは、ドル一極集中からの分散投資の動きが顕著であることを意味する。日本企業は、円の相対的な安定性が高まることで、国際取引における決済通貨としての円の利用拡大や、円建て資産への投資妙味が増す機会を捉えるべきである。例えば、新興国市場でのインフラ投資や資源開発において、円建てでの資金調達や契約締結を積極的に検討することで、為替リスクを低減しつつ事業拡大を図れる可能性がある。