中国の白物家電市場を牽引してきた2大企業、Gree「グリー」(格力電器)ハイアール智家(Haier Smart Home)の業績が伸び悩んでいる。市場全体の縮小という逆風の中、Greeは減収減益となり、先行していたハイアールも直近の四半期で失速した。エアコン事業に依存するGreeと、多角化・海外展開を進めるハイアール。両社の戦略の違いが業績に色濃く反映されている。

減収減益のGree、高配当で株価を維持

Greeが発表した2023年通期決算は厳しい内容となった。売上高は前年比9.89%減1704.47億元(約3兆4000億円)、親会社株主に帰属する純利益も同9.89%減290.03億元(約5800億円)と、売上・利益ともに落ち込んだ。市場調査会社AVC(奥維雲網)によると、2023年の中国家電小売市場は全体で前年比4.3%縮小しており、Greeは市場平均を上回る落ち込みに見舞われた形だ。

不振の主因は総売上の78%を占める主力の家電事業で、特に国内販売が10.67%減と大きく落ち込んだ。一方で同社は、10株あたり20元という手厚い配当案を発表。これが投資家に好感され、決算発表の翌日には株価が5.85%上昇する逆行高を演じた。

海外・高級路線で成長したハイアールの変調

対照的に、ハイアールは2023年通期で増収を確保した。売上高は前年比5.71%増3023.47億元(約6兆円)と、初めて3000億元の大台を突破した。成長の原動力は海外事業で、売上高は8.15%増1545.45億元に達し、初めて総売上の5割を超えた。国内では高価格帯ブランド「カッサーティ(Casarte)」が好調を維持し、1万5000元(約30万円)以上の冷蔵庫や洗濯機市場で7〜8割の圧倒的なシェアを握る。

しかし、そのハイアールも安泰ではない。2024年第1四半期決算では、売上高が前年同期比6.86%減、純利益が15.22%減と急ブレーキがかかった。これを受け、多くのアナリストが同社の利益予測を下方修正している。

単一事業モデルの限界と今後の課題

Greeは長年、エアコン事業という強力な収益源を築いてきた。エアコンは設置やアフターサービスが重要で、ブランドへの信頼が利益に直結しやすい。これにより、Greeの家電事業の粗利益率は35%超と極めて高く、単一事業だけでハイアールグループ全体の利益を上回るほどの収益性を誇ってきた。

しかし、この単一事業への過度な依存が今、諸刃の剣となっている。中国のエアコン市場が飽和状態に近づく中、Greeの事業多角化は遅々として進まず、リスクを分散する新たな収益の柱を確立できていない。市場が成熟した今、エアコン依存からの脱却は急務だ。一方、多角化で先行したハイアールも成長の持続性が問われており、中国家電の2強はそろって戦略の転換点という正念場を迎えている。

白物家電とは

白物家電(しろものかでん)とは、家庭内の家事の労力を減らしたり、あるいは生活に密着した家電製品の一般名称である。生活家電(せいかつかでん)や家事家電(かじかでん)ともいわれる。普及し始めた当初は娯楽家電(黒物家電)に対し筐体の色が白いものが多かったことからこの名前で呼ばれるようになった[1]が、銀色やパステルカラーなどの製品も一般化して久しい。

まとめ:日本への示唆

今回のGreeとハイアールの決算は、日本企業にとって中国市場の構造変化と新たな機会を示唆する。Greeが2023年通期で売上高9.89%減、純利益も9.89%減と大幅な減収減益に陥ったのは、エアコン単一事業への過度な依存が原因だ。これは、特定の製品分野で中国市場の飽和が急速に進んでいることを明確に示している。日本企業、特に家電メーカーは、中国市場での単一製品戦略のリスクを再認識し、多角化や高付加価値化へのシフトを加速させる必要がある。

一方、ハイアールは2023年通期で売上高5.71%増と増収を確保したが、2024年第1四半期には売上高6.86%減、純利益15.22%減と急ブレーキがかかった。これは、海外展開や高級ブランド「カッサーティ(Casarte)」による国内高価格帯市場の開拓が一時的な成長ドライバーに過ぎず、中国経済全体の減速や市場競争の激化が、多角化企業にも影響を及ぼし始めたことを意味する。

日本企業にとっての具体的な示唆は二点ある。第一に、中国市場における高価格帯・高付加価値製品への需要は依然として存在し、ハイアールの「カッサーティ」の成功はその証左だ。日本企業は、単なる価格競争ではなく、品質、デザイン、ブランド力で差別化を図ることで、このニッチな高価格帯市場での優位性を確立できる可能性がある。第二に、Greeの苦境は、中国国内の家電市場が成熟し、消費者のニーズが多様化していることを示唆している。日本企業は、環境配慮型製品やスマートホーム連携など、新たな付加価値を提供することで、既存の中国企業とは異なる競争軸を構築する機会がある。