中国北部の内モンゴル自治区が、豊富な風力・太陽光資源を活用し、国内最大級の新エネルギー拠点へと急成長している。2024年4月には風力発電の設備容量が中国で初めて1億キロワットを突破。安価なグリーン電力を武器に先端産業を誘致し、中国全体のエネルギー安全保障と脱炭素化を支える。

風力発電1億kW突破、国内最大の拠点に

内モンゴルは新エネルギー開発を加速させている。2023年には年間で3500万キロワットの新規設備を導入。2024年4月、風力発電の設備容量が全国で初めて1億キロワットの大台を突破した。

これにより、自治区内の新エネルギー設備容量は1億7000万キロワットを超え、年間発電量は2700億キロワット時に達した。これは自治区の総発電量の3分の1にかなりする。自治区政府は、2026年までに年間3000万キロワットの新規設備導入と、新エネルギー発電量3000億キロワット時超えという、さらに意欲的な目標を掲げている。

グリーン電力が育む先端産業クラスター

豊富で安価なグリーン電力は、新たな産業を呼び込む磁石となっている。通遼市では、低廉な電力を活かしてアルミニウムや風力発電設備、新素材などの産業クラスターを育成。「グリーン電力が事業を呼び、事業が産業を育て、産業がグリーン電力の需要を創出する」という好循環が生まれている。

区都フフホト市の和林格爾(ホーリンゴル)新区は国内有数のデータセンター集積地となり、グリーン電力の使用率は86%に達する。また、ウランチャブ市では既存の鉄合金産業が石炭からグリーン電力への転換を果たし、環境配慮型の産業モデルとして注目を集めている。包頭市は「世界のグリーンシリコン拠点」を掲げ、太陽光パネル部材の世界最大の生産基地を目指す。

国家戦略を支える域外送電と産業誘致

内モンゴルの取り組みは、国家戦略とも密接に連携している。同自治区は中国のエネルギー生産量の約6分の1を占める重要拠点であり、域外への送電量は全国の地域間送電量の3分の1に上る。

2023年のグリーン電力の域外送電量は900億キロワット時に達し、前年比40%以上の伸びを記録したと、中国国営の新華社通信は伝えた。特に「砂漠・ゴビ・荒地」と呼ばれる未利用地での大規模な風力・太陽光発電基地の建設が国家事業として進められている。

オルドス市で計画中の基地が完了すれば、上海市など華東地域へ年間約720億キロワット時を供給できる見込みだ。こうしたグリーン電力は他地域からの産業移転を促す切り札となっており、2023年の関連事業の新規契約は258件(前年比25.4%増)に上った。

日本の関連性

内モンゴル自治区の風力発電1億キロワット突破は、日本企業にとって複数の影響をもたらす。第一に、中国の脱炭素化が加速する中で、日本が強みを持つ省エネ技術や再エネ関連機器の需要が変化する可能性がある。特に、和林格爾(ホーリンゴル)新区のデータセンター集積地でグリーン電力使用率が86%に達していることから、日本企業はデータセンター向けの冷却システムや高効率電源装置といった分野で新たな市場機会を探るべきだ。

第二に、内モンゴルが「世界のグリーンシリコン拠点」を目指し、太陽光パネル部材の生産基地化を進める動きは、日本の太陽光発電産業に直接的な競争圧力となる。中国が低価格で高品質な部材を供給する能力を高めることで、日本のメーカーはコスト競争力をさらに強化するか、高付加価値製品への特化を迫られるだろう。

第三に、内モンゴルから上海市など華東地域へ年間約720億キロワット時を供給する計画は、中国全体の電力価格の安定化に寄与し、日本企業の中国国内での事業展開における電力コスト予測に影響を与える。特に、電力多消費型産業に進出している日本企業は、安定供給される安価なグリーン電力を活用することで、生産コストを削減できる可能性がある。日本企業は、内モンゴルのような再生可能エネルギー集積地における産業政策の動向を注視し、サプライチェーンの再構築や新たな事業提携の機会を模索すべきである。