世界の原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を巡り、米国とイランの軍事的な緊張が極度に高まっている。米国が海峡で航行不能となっている船舶を誘導する作戦の開始を発表したのに対し、イランは5月4日、「米軍が海峡に侵入すれば攻撃する」と強硬に警告したした。2カ月以上にわたる海峡封鎖で世界のエネルギー供給網が混乱する中、偶発的な衝突が全面的な軍事対決に発展するリスクが現実味を帯びてきた。

米国の「自由プロジェクト」にイランが猛反発

米国のトランプ大統領は3日、ホルムズ海峡で足止めされている船舶を安全に誘導するため、「自由プロジェクト」と名付けた作戦を4日朝から開始すると発表した。米中央軍によると、この作戦には兵士1万5000人、航空機100機以上、軍艦、無人機(ドローン)(ドローン)が投入されるという。中央軍のクーパー司令官は「『防御的任務』だ」としながらも、イランに対する海上封鎖は継続する方針を示した。

これに対し、イラン軍は即座に声明を発表。「ホルムズ海峡の安全はイランが確保している。米軍など外部のいかなる武装勢力も、海峡へのいかなる侵入を試みれば攻撃対象となる」と警告したし、商船やタンカーにもイラン軍との調整なしに航行しないよう通告した。

停戦合意決裂の危機、海峡はイランの生命線

イランは、米国の作戦を事実上の停戦合意違反と見なしている。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラは4日、イラン議会や軍関係者が「米軍がホルムズ海峡やペルシャ湾に進入すれば、停戦は破られ交戦状態に入る」と警告したしていると報じた。

イランにとって、海峡の支配権維持は安全保障上の要であると同時に、経済的な生命線でもある。長年の経済制裁に加え、紛争で産業基盤が大きな打撃を受ける中、海峡の通航から得られる収入は経済復興に不可欠なため、譲れない一線とみられる。

一触即発の海峡、国際社会は静観

米国も一歩も引かない構えだ。トランプ大統領は作戦発表時、「いかなる妨害にも強硬手段で対応する」と明言している。海峡の緊張を裏付けるように、イギリスの海事機関は4日、アラブ首長国連邦(UAE)沖でタンカーが何らかの飛翔体による攻撃を受けたと報告した。

米イランの紛争が始まってから2カ月余り、ホルムズ海峡はほぼ封鎖状態にあり、国際海事機関によれば数百隻の船舶と最大2万人の船員が足止めされている。米国は航行の安全を確保するため国際的な有志連合の結成を呼びかけてきたが、欧州の同盟国さえも参加を拒否しており、孤立した形での作戦遂行を迫られている。

まとめ:日本への示唆

ホルムズ海峡での米イラン間の緊張激化は、日本にとって複数の具体的な影響を及ぼす。まず、日本経済は原油輸入の約9割を中東に依存しており、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、原油価格の高騰と供給不安は避けられない。特に、日本の主要企業であるENEOSや出光興産は中東からの原油調達比率が高く、生産コストの増大やサプライチェーンの混乱に直面する。現状で数百隻の船舶と最大2万人の船員が足止めされている状況は、日本のエネルギー供給に直接的な打撃を与える可能性がある。

次に、米国の「自由プロジェクト」に兵士1万5000人、航空機100機以上が投入される大規模な軍事作戦は、偶発的な衝突から全面戦争への発展リスクを孕む。万が一、イランが警告通り「米軍が海峡に侵入すれば攻撃する」事態となれば、日本の商船やタンカーも巻き込まれる危険性が高まる。これは、海上輸送保険料の高騰や、最悪の場合、邦人船員の安全確保という喫緊の課題を突きつける。

最後に、国際社会が米国の有志連合への参加を拒否している状況は、日本が外交的に難しい立場に置かれることを示唆する。米国との同盟関係を維持しつつ、中東からの安定的なエネルギー供給を確保するためには、日本独自の外交努力が不可欠となる。例えば、イランとの対話ルートを維持し、緊張緩和に向けた仲介役を模索するなど、多角的なアプローチが求められる。