山東科学技術大学が、研究成果の実用化と技術移転を加速している。専門組織「技術移転研究院」を中核に産学連携を強化し、「第14次五カ年計画」期間中に技術移転契約を4800件以上締結、契約総額は30億元(約600億円)に達した。
専門組織が技術移転を主導
同大学の技術移転研究院は、大学と企業の橋渡し役として、研究成果の実用化を専門に担う組織だ。院長の孫開師氏によると、同院は「大学―学部―技術移転人材」からなる3段階の仲介システムを構築し、専門的な技術移転チームを組織している。
具体的な成功事例として、2023年には化学メーカーの臨沂臨虹無機材料が、塗宝峰教授のチームが開発した「高性能固体酸化物燃料電池・電解槽技術」の事業化に対し、5000万元(約10億円)を出資した。
地方政府や企業との連携拠点も設立
山東科学技術大学は、地方政府や他の研究機関、企業とも積極的に連携している。これまでに、西北研究院や山西研究院、各地の技術移転センターなど、一連の研究開発・実用化拠点を共同で設立した。
こうした取り組みが実を結び、「第14次五カ年計画」(2021〜2025年)の期間中、同大学が締結した技術移転契約は4800件を超えた。契約総額は30億元に上り、このうち500万元(約1億円)を超える大型契約も50件に達している。
日本市場への影響
山東科学技術大学の技術移転加速は、日本の対中ビジネス戦略に新たな機会と課題を提示する。まず、同大学が「第14次五カ年計画」期間中に4800件以上の技術移転契約を締結し、契約総額が30億元(約600億円)に達した事実は、中国国内で研究成果の商業化が急速に進んでいることを示す。特に、臨沂臨虹無機材料が塗宝峰教授チームの技術に5000万元(約10億円)を出資した事例は、中国企業が大学発の先端技術に対し、巨額の投資を厭わない姿勢を明確にしている。
これは、日本の化学メーカーや素材メーカーにとって、中国市場への新たな参入機会となり得る。従来の製品輸出や現地生産に加え、日本の大学や研究機関が持つ先端技術を、山東科学技術大学のような中国の技術移転組織を通じて、中国企業にライセンス供与するビジネスモデルが有効になる可能性がある。
一方で、中国の大学が持つ技術力と、それを実用化するスピードが向上していることは、日本の産業界にとって競争激化を意味する。特に、高性能固体酸化物燃料電池のような環境・エネルギー分野の技術は、日本の得意分野と重複する。中国がこの分野で自律的な技術開発と商業化を加速させれば、将来的には日本企業のグローバル市場における競争優位性が脅かされるリスクがある。日本の企業は、自社の技術ポートフォリオを再評価し、中国の技術動向を精密に分析した上で、協業か競争かの戦略的判断を迫られるだろう。