中国の送配電最大手、国家電網は2025年、省をまたぐ電力取引量が前年比10%増の1兆6700億キロワット時 (kWh) に達したと発表した。同社は超高圧送電網の建設を加速させるとともに、全国統一電力市場の構築を推進し、エネルギー供給の安定化と質の高い発展を目指している。

超高圧送電網の建設が加速

国家電網は2025年、重点的な電力網プロジェクトの建設を大幅に推進し、送電網の構造を最適化した。具体的には、大同―懐来―天津南や蒙西―北京・天津・河北などを結ぶ複数の超高圧送電プロジェクトが新たに着工した。一方で、隴東―山東や哈密―重慶などの超高圧プロジェクトは高品質に完了したという。

また、四川省の攀西電力網の最適化・改良工事や新疆地区のタリム盆地環状電力網プロジェクトも完了した。エネルギー貯蔵能力の増強も進め、遼寧省清原や浙江省寧海など4カ所の揚水発電所が全面的に完了した。

全国統一電力市場の構築を推進

同社は電力市場改革を着実に推進し、全国統一電力市場の初期段階の構築を支援した。市場化改革の方針を堅持し、送配電料金改革や電力市場システムの整備、取引機関の規範的運営、スポット市場の試験導入など、各種の改革課題に取り組んだ。

こうした取り組みが奏功し、国家電網の事業エリアにおける2025年の省間取引電力量は1兆6700億kWhに達した。これは、再生可能エネルギーの広域的な融通や電力需給の安定化に大きく貢献するものである。

安定した経営基盤を維持

国家電網は、国有資産監督管理委員会 (SASAC) による経営評価で21年連続となる「A評価」を獲得した。また、国際的な三大格付け機関からも13年連続で中国のソブリン格付けと同等の信用格付けを得ており、安定した経営基盤を維持している。

日本の関連性

国家電網の超高圧送電網整備加速は、日本の電力産業とサプライチェーンに直接的な影響を及ぼす。まず、中国の再生可能エネルギー広域融通強化は、日本企業が中国市場で太陽光パネルや風力発電関連部品の輸出競争に直面する可能性を高める。特に、中国国内での再エネ発電量の増加と送電網の効率化は、中国製再エネ関連製品のコスト競争力を一層強化させ、日本メーカーの市場シェアを圧迫するリスクがある。

次に、新疆地区のタリム盆地環状電力網プロジェクト完了は、同地域の産業活動活発化を促す。この地域は日本の自動車部品や電子部品メーカーにとって重要なサプライチェーン拠点であるため、電力供給安定化は生産性向上に寄与する。しかし、一方で、人権問題に絡むサプライチェーンの透明性確保が国際的に厳しく問われる中、同地域での事業展開は、日本企業にとって新たなレピュテーションリスクを伴う可能性も考慮する必要がある。

最後に、国家電網が2025年に省間取引電力量1兆6700億kWhを達成した事実は、中国の電力需要が依然として旺盛であることを示す。これは、日本の重電メーカーや電力インフラ関連企業にとって、中国市場での新たなビジネス機会となり得る。特に、中国が掲げる「全国統一電力市場」構築の動きは、電力システム関連の技術やノウハウを持つ日本企業に、コンサルティングやシステム構築支援といった新たな事業領域を開拓する可能性を提供する。ただし、中国政府による自国企業優遇政策や技術移転要求のリスクも念頭に置く必要がある。