中国の送配電最大手である国家電網は、甘粛省隴東から山東省を結ぶ±800kVの超高圧直流(UHVDC)送電プロジェクトが稼働を開始したと発表した。このプロジェクトは、中国のエネルギー戦略「西電東送」の新たな大動脈として、西部の豊富なエネルギー資源を東部の電力需要地へ供給し、エネルギー安全保障と経済成長を支える。

「西電東送」を担う新たな大動脈

今回稼働した送電網は、甘粛省から山東省まで全長915kmに及ぶ。これは、中国が推進する「西電東送(西部地域で発電した電力を東部沿岸地域に送電する国家戦略)」の重要な一環だ。特に、風力・太陽光・火力・蓄電を統合した中国初の大型総合エネルギー基地から電力を送るプロジェクトとして注目されている。

この送電網の稼働により、山東省の電力供給能力は大幅に向上し、同省の経済発展を支える強力な原動力となる。同時に、甘粛省で開発が進む再生可能エネルギーの安定的な送電が可能となり、1000万kWを超える新エネルギーの設備容量を有効活用できる見込みだ。

国産技術でボトルネックを克服

このプロジェクトは、技術面でも大きな意義を持つ。国家の特別研究プロジェクトの成果を活用し、これまで超高圧送電における「ボトルネック問題」とされてきた重要技術を国産で解決した実証プロジェクトと位置づけられている。

具体的には、一括で全容量が稼働する初の超高圧直流プロジェクトであり、これにより中国の電気設備における自給率と制御能力が向上する。国家の基幹産業である高度な送変電設備のサプライチェーン強靭化にも貢献すると期待されている。

結論:日本への示唆

国家電網による甘粛省と山東省を結ぶ±800kVのUHVDC送電網稼働は、日本の電力インフラ企業に直接的な影響を与える。第一に、中国が915kmもの長距離送電網を国産技術で構築したことは、東芝や日立といった日本の重電メーカーが持つ超高圧送電技術の優位性が揺らぎかねないことを意味する。特に、これまでボトルネックとされてきた重要技術を中国が克服したと報じられている点は、日本の技術輸出機会の減少に直結するリスクがある。

第二に、このプロジェクトによって甘粛省の1000万kWを超える新エネルギー設備容量が有効活用されることは、日本の再生可能エネルギー関連企業にとって新たな市場機会を示唆する。中国の広大な西部地域における再エネ開発は今後も加速すると見られ、日本の蓄電池技術やスマートグリッド関連技術が、中国のエネルギー貯蔵・管理ニーズに応える形で参入できる余地が生まれる可能性がある。

第三に、国家電網が「国産技術でボトルネックを克服」し、サプライチェーンの強靭化を図る姿勢は、日本企業が中国市場で事業を展開する上で、技術移転や共同開発の要求がさらに強まる可能性を示唆する。これは、日本の知的財産保護戦略に新たな課題を突きつけるものとなる。