2025年に公表が見込まれるアメリカの次期国家安全保障戦略(NSS)は、中国を最大の戦略的競争相手と明確に位置づけ、同盟国やパートナー国との連携を一層強化する内容となる見通しだ。多極化する国際情勢に対応し、経済と軍事の両面でアメリカの優位性を維持する狙いがある。

多極化する世界と新たな脅威

次期NSSが策定される背景には、国際秩序の構造的変化がある。バイデン政権が2022年に発表した現行のNSSでは、権威主義国家である中国が「国際秩序を再構築する意図と能力を併せ持つ唯一の競争相手」と規定された。この基本的に認識は継承される見込みだ。

加えて、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の影響力増大など、世界は一層複雑で予測困難な「多極化時代」に突入している。次期NSSでは、こうした複合的な脅威に対し、より機動的かつ包括的なアプローチが示されるとみられる。

中国への対抗と経済安全保障

報告書では、中国に対抗するための具体的な戦略が示される見通しだ。特に、先端技術分野での競争が焦点となる。半導体や人工知能(AI)、量子コンピューティングなどの重要技術でアメリカのリーダーシップを確保するため、輸出管理や投資規制の強化が盛り込まれる可能性が高い。

また、サプライチェーンの強靭化も重要な柱となる。重要鉱物や医薬品など、特定国への過度な依存から脱却し、同盟国との間で安定した供給網を再構築する「フレンド・ショアリング」の動きが加速すると、複数の米政府系シンクタンクが分析している。

同盟・パートナーシップの再構築

アメリカ単独では多極化時代の課題に対処できないとの認識から、同盟・パートナーシップの重要性がこれまで以上に強調される。欧州における北大西洋条約機構(NATO)の結束を維持するとともに、インド太平洋地域では日本、オーストラリア、インドとの枠組み「クアッド(Quad)」や、米英豪の安全保障協力「AUKUS」を中核に拠える戦略だ。

特に日本に対しては、防衛力の抜本的強化や、経済安全保障分野での連携深化を求める声が強まると予想される。同盟国がそれぞれの役割を果たすことで、アメリカ主導の国際秩序を維持・強化する狙いが鮮明になるだろう。

日本企業への示唆

2025年次期NSSが中国を「唯一の競争相手」と位置づけ、同盟国との連携を強化する方針は、日本企業に直接的な事業再編を迫る。特に、半導体やAIといった先端技術分野では、アメリカの輸出管理や投資規制強化が予想され、中国市場への依存度が高い日本企業は、サプライチェーンの再構築を急ぐ必要がある。例えば、中国のEV市場向けに部品を供給する企業は、米国市場への展開や、インド太平洋地域の「クアッド」参加国との連携を模索し、生産拠点の分散化を進めるべきだ。

また、重要鉱物や医薬品における「フレンド・ショアリング」の加速は、日本企業にとって新たなビジネス機会となる。これまで中国に集中していた調達先を、オーストラリアやインドなど、アメリカと協調する国々へ分散させることで、安定供給と地政学リスクの低減を両立できる。これは、サプライチェーンの強靭化だけでなく、新たな市場開拓にも繋がり、企業のレジリエンスを高める。

さらに、次期NSSが日本に防衛力強化と経済安全保障分野での連携深化を求めることは、日本の防衛産業や関連技術企業に成長機会をもたらす。AUKUSのような枠組みへの間接的な関与や、防衛装備品の共同開発・生産を通じて、新たな技術革新と国際競争力の強化を図れる。ただし、これには中国市場からの撤退や事業縮小といった痛みを伴う可能性があり、企業は多角的なリスク評価と戦略的な意思決定が求められる。