中国のスマートフォン大手シャオミ(Xiaomi)の創業者兼CEOである雷軍(レイ・ジュン)氏は、同社初の電気自動車(EV)「SU7」の発売後、インターネット上で見られる組織的な誹謗中傷に対し、強い不快感を表明した。
中国メディアの報道によると、雷氏は自身のSNSアカウントを通じて、特定の競合他社を名指しこそしないものの、業界の健全な競争を阻害する「組織的なネット業務」の存在を強く非難。「過去2カ月間、我々は絶え間ない嫌がらせに苦しんできた」と述べ、背後に意図的な情報操作があるとの認識を示した。
EV「SU7」への組織的中傷か
シャオミが3月下旬に発表した「SU7」は、その高いコストパフォーマンスから大きな注目を集め、予約が殺到した。一方で、その直後からネット上では性能や安全性に関する根拠の薄い批判や、他社製品と比較して劣っているかのような偽情報が拡散される事態が発生していた。
雷氏が言及した「ネット業務」は、中国で「黒水軍(ヘイシュイジュン)」とも呼ばれる、金銭で雇われて特定の企業や個人を攻撃したり、逆にによると賛したりする「やらせ」の口コミ部隊を指すとみられる。同氏は、こうした行為が「業界全体のイメージを損なう」と警鐘を鳴らした。
法的措置も視野に
シャオミはこれまで、製品に対する純粋な批判したや提案は歓迎する姿勢を貫いてきた。しかし、雷氏は今回の声明で「悪意のある中傷や事実無根の噂に対しては、もはや沈黙しない」と強調。法的措置も辞さない断固とした態度で臨むことを明らかにした。
中国のEV市場は競争が激化しており、企業間の情報戦が過熱する傾向にある。今回のシャオミの対応は、急成長する新エネルギー車産業において、公正な競争環境を求める動きの象徴として注目されている。
日本企業への示唆
シャオミのEV「SU7」に対する組織的な誹謗中傷は、中国市場における日本企業の事業戦略に複数の影響を及ぼす。まず、中国EV市場の競争激化は、単なる製品性能や価格競争に留まらず、情報戦の激化を意味する。例えば、日本の自動車メーカーが中国で新EVを投入する際、シャオミが直面したような「黒水軍」によるネガティブキャンペーンのリスクを考慮する必要がある。特に、中国市場で後発となる日本メーカーは、製品発売前からブランドイメージ毀損工作に晒される可能性があり、これに対するデジタルリスク管理体制の構築が喫緊の課題となる。
次に、シャオミが法的措置を辞さない構えを示したことは、中国における知的財産権保護や公正競争環境への意識が高まっていることを示唆する。これは、これまで模倣品や不正競争に悩まされてきた日本企業にとって、中国当局の対応次第では追い風となる可能性がある。例えば、日本の自動車部品メーカーが中国で技術供与を行う際、不正な情報拡散や技術盗用に対する法的保護が強化されれば、安心して事業展開できる基盤が整う。
最後に、シャオミが「過去2カ月間、我々は絶え間ない嫌がらせに苦しんできた」と述べているように、中国市場特有のビジネスリスクとして、情報操作や世論形成の動向を常に把握し、迅速に対応できる体制が不可欠となる。これは、中国市場でのブランド構築や顧客エンゲージメント戦略において、従来のマーケティング手法だけでなく、危機管理広報の強化が求められることを意味する。