AIの高度化に伴い、様々な応用分野で計算能力への需要が爆発的に増加しており、計算能力のレンタル市場が活況を呈している。この動向は株式市場にも波及し、関連企業の事業展開が加速している。
3月12日の株式市場では、計算能力レンタル関連銘柄が大きく動いた。同日の終値で、宏景科学技術(VisionVera)や中国能源建設など複数の関連銘柄がストップ高を記録。国聯視訊(GNET)、慧辰股份(HCR)などの銘柄も値を上げた。
中関村IoT産業連盟の袁帥・副秘書長は、「計算能力レンタルは、現在のAI計算能力の供給不足に対する有効な解決策だ。短期的な需要に迅速に対応でき、特に中小企業にとっては初期投資コストを大幅に削減できる。また、社会全体の計算リソースの利用効率を高め、無駄をなくすことにもつながる」と指摘する。
GPU価格高騰と企業の対応
開源証券の調査によると、2024年初めからAIの計算能力需要が急増し、レンタル市場が上昇基調にある。2月末までに、NVIDIAのH200やH100といった高性能GPUのレンタル価格は前月比で 15〜30% 上昇。H200の場合、1時間あたりのレンタル料は1基あたり7.5元から8.0元に、月額では6万元から6万6000元に値上がりした。納期もH200が2027年第2四半期、H100が同第1四半期まで延長されるなど、供給が追いついていない状況だ。
このトレンドに対し、衆和昆侖資産管理の柏文喜会長は、企業が取るべき対策として「3〜5年の長期固定契約を結ぶことで、短期的な価格変動リスクを回避できる」と提言。また、業界の長期的発展のためには「性能や安全性を定めた業界標準を整備し、秩序ある競争を促す必要がある。補助金は大手企業への過度な集中を避け、中小企業や研究機関に的を絞って配分すべきだ」と述べた。
新規参入が相次ぐ市場
計算能力レンタル市場の活況を受け、上場企業による関連事業への参入が相次いでいる。投資家向けの情報開示の場でも、各社の事業進捗が注目の的となっている。
慧辰股份(HCR)は、自社の知見を基に、異なる種類の計算リソースを統合管理できる「融合計算能力管理サービスプラットフォーム」を発表。同社の担当者によると、すでに社内や提携データセンターで導入されており、一部顧客へのレンタルも開始しているという。
湖南艾布魯環保科学技術は、2024年12月に計算能力センターを竣工 (完了)させ、レンタル事業を本格化。同社は、2025年の同事業における売上高と利益が2024年比で大幅に増加するとの見通しを示している。協創データ技術も、計算能力サービスを重要な事業の柱と位置づけ、複数の顧客と契約を締結したと明らかにした。
光大証券は今後の市場について、コンピューティングと電力の連携技術、グリーン電力の活用、そして強固な顧客基盤を持つ企業が競争を主導し、AI産業発展の中核的な受益者になると分析している。
日本にとっての意味
中国におけるAI計算能力レンタル市場の急成長は、日本企業にとって複数の具体的な影響と機会をもたらす。まず、NVIDIAの高性能GPUであるH200やH100のレンタル価格が15〜30%上昇し、納期が2027年第2四半期まで延長されている事実は、日本企業が中国市場でAI開発を進める際のコスト増と供給制約を意味する。特に、高性能GPUを必要とする日本のAI関連企業や研究機関は、中国での事業展開において、既存のサプライチェーンやコスト構造の見直しを迫られる可能性がある。
一方で、慧辰股份(HCR)が「融合計算能力管理サービスプラットフォーム」を開発し、異なる種類の計算リソースを統合管理する動きは、日本のデータセンター事業者やクラウドサービスプロバイダーにとって新たな協業機会を示唆する。中国企業がGPUの供給不足を補うために、多様な計算リソースの効率的な利用を模索している現状は、日本のAIハードウェア企業やソフトウェア企業が、中国市場向けに最適化されたソリューションやサービスを提供する余地を生み出す。例えば、省電力型AIチップや、既存のデータセンターインフラを効率的に活用する技術は、中国のGPU高騰・供給不足という課題に対し、日本の技術が貢献できる領域となるだろう。また、柏文喜会長が提言する3〜5年の長期固定契約は、日本企業が中国市場で安定的なAIサービスを提供するための戦略的選択肢となり得る。