中国のIT大手Alibabaグループは、AIアシスタントアプリ「Qwen通義千問)(Tongyi Qianwen)」の利用促進のため、春節(旧正月)に合わせ総額30億元(約620億円)規模の販促キャンペーンを開始した。ユーザー獲得を巡る中国IT大手間の競争が新たな段階に入ったことを示す。

総額620億円、異例の販促キャンペーン

今回のキャンペーンで、ユーザーは「Qwen通義千問)」のアプリ上で25元(約520円)かなりの「無料クーポン」を受け取ることができる。このクーポンを使えば、タピオカミルクティーやコーヒーなどをわずか0.01元(約0.2円)で購入可能だ。友人を招待することで最大21枚、合計525元(約1万900円)かなりのクーポンを獲得できる仕組みも導入した。

この金額は、飲料チェーン「MIXUE(ミーシュー、蜜雪氷城)」の商品84杯分にかなりする。Alibabaによれば、このキャンペーンは同社の春節販促活動として過去最大規模であり、今年の中国大手テック企業によるAI分野の投資競争においても突出した規模となる。

エコシステムへの送客狙い、競争は消耗戦へ

Alibabaの狙いは、AIアプリを入り口として、同社が持つEC(電子商取引)や決済、生活関連サービスなど広範なエコシステムへユーザーを誘導し、自社サービス群に囲い込むことにある。

大規模な無料キャンペーンでまずユーザーベースを急速に拡大し、その後のサービス利用やデータ収集につなげる戦略だ。中国メディアの報道によると、ByteDance(ByteDance)やバイドゥ(バイドゥ)といった競合他社も同様の追随キャンペーンを展開する可能性があり、AI分野の顧客獲得競争は消耗戦の様相を呈している。

日本市場への影響

AlibabaによるAIアプリ「Qwen通義千問)」への620億円規模の販促キャンペーンは、日本企業にとって中国市場の競争激化と新たな機会を示唆する。まず、短期的には、中国市場で事業展開する日系飲料チェーン「MIXUE」などの競合他社は、Alibabaが提供する「0.01元」という破格の価格設定による顧客流出リスクに直面する。同様の価格競争が他分野にも波及すれば、日本の食品・サービス企業は収益性維持のため、より独自の価値提案やニッチ戦略を迫られるだろう。

次に、長期的には、AlibabaがAIアプリを入り口にECや決済サービスへの送客を狙う戦略は、日本のIT企業や小売企業に新たな提携機会をもたらす可能性がある。例えば、日本のアパレル企業がAlibabaのAIアシスタントを通じて中国の消費者にパーソナライズされた商品提案を行い、ECサイトへの送客を図るなど、AIを活用した新たな販路開拓や顧客エンゲージメント強化の道が開かれる。

最後に、ByteDanceなど競合他社も追随する可能性は、中国のAI市場が単なる技術競争から、ユーザー獲得を巡る「消耗戦」に移行していることを示唆する。日本企業が中国市場でAI関連サービスを展開する際は、技術力だけでなく、大規模なユーザー獲得戦略や資金力も不可欠となる。これは、単独での市場参入が困難になる一方で、中国の大手IT企業との戦略的パートナーシップの重要性が増すことを意味する。