中国のスタートアップUniverが開発したAIネイティブの表計算ソフトが、2023年12月に実施されたグローバルベンチマーク「SpreadsheetBench」で首位を獲得した。同社のAI製品「表答 (Biaoda)」は、OpenAIのChatGPT AgentやマイクロソフトのExcel Copilotを上回り、次世代のデータ処理ツールとして注目される。

元Lark開発者が創業、AIネイティブ表計算「Univer」

Univerは、従来の表計算ソフトをAIネイティブな汎用計算エンジンへと進化させることを目指すスタートアップである。創業者兼CEOの劉洋氏は、ByteDanceの業務用コラボレーションツール「Lark(飛書)」でスプレッドシート機能の技術責任者を務めた経歴を持つ。

劉氏が余暇に開発したオープンソースの表計算プロジェクト「Luckysheet」は、GitHubで1.6万以上のスターを獲得するなど、高い評価を得ていた。Univerは、この知見を基に設立された。

非効率なデータ処理、従来の表計算ソフトが抱える課題

多くの企業ではBIツールが導入されているものの、現場の従業員は依然としてExcelなどの表計算ソフトで日々のデータ処理を行っている。これらのツールは自由度が高い一方で、データクレンジングや計算、可視化といった一連の作業が複雑で非効率になりがちだ。

Univerは、この非効率性を根本から解決することを目指す。AIが計算ロジックを直接呼び出し、人間の介在を最小限にすることで、データ処理の生産性を飛躍的に向上させる仕組みだ。

ベンチマークで首位、ChatGPTやCopilotを凌駕

Univerの製品は、基盤となる「Univerエンジン」、開発者向けの多様なSDKプラグイン、そしてAIアプリケーションから構成される。中国メディアの報道によると、同社のAI製品「表答 (Biaoda)」は、2023年12月に実施されたグローバルベンチマーク「SpreadsheetBench」で68.86%のスコアを記録し、首位を獲得した。

このスコアは、OpenAIのChatGPT AgentやマイクロソフトのExcel Copilotを上回るものだ。Univerは、AIが自然言語の指示を理解し、自律的にデータ処理を実行するAIネイティブ表計算ソフトの未来を切り拓いている。

日本にとっての意味

中国のスタートアップUniverがAIネイティブ表計算ソフトで世界ベンチマーク首位を獲得したことは、日本のSaaS市場と企業生産性へ直接的な影響をもたらす。まず、Microsoft Excel Copilotを凌駕する性能を持つ「表答 (Biaoda)」の登場は、日本のSaaS企業にとって脅威であると同時に、新たな提携機会を生む可能性がある。特に、日本の企業がデータ分析や業務効率化でいまだExcelに大きく依存している現状を鑑みると、Univerのような高性能AIツールが普及すれば、既存のBIツールやRPAベンダーは競争戦略の見直しを迫られる。

次に、創業者劉洋氏がByteDanceの「Lark」開発経験を持ち、オープンソースプロジェクト「Luckysheet」で1.6万以上のスターを獲得した実績は、中国AIスタートアップの技術力と開発スピードが日本企業が想像する以上に急速に進化していることを示唆する。これにより、日本のIT人材市場では、AIを活用したSaaS開発スキルを持つ人材の需要がさらに高まるだろう。

最後に、Univerが目指す「AIが計算ロジックを直接呼び出し、人間の介在を最小限にする」アプローチは、日本の製造業やサービス業におけるデータ入力・処理の自動化ニーズと合致する。2023年12月のベンチマークで68.86%のスコアを記録した「表答 (Biaoda)」が日本市場に本格参入すれば、労働力不足に悩む日本企業にとって、生産性向上とコスト削減の強力なソリューションとなる一方、既存の業務プロセスや雇用形態に大きな変革を迫る可能性も秘めている。