中国でAI(人工知能)を搭載した「AIグラス」の市場が急速に拡大している。市場調査会社IDCによると、2024年第3四半期の中国市場は前年同期比62.3%増を記録した。AlibabaやByteDanceといったテクノロジー大手が相次いで参入しており、スマートフォンに次ぐ成長分野として注目が集まっている。
中国で本格化するAIグラス市場
AIグラスは、スマートフォンの次に急成長が見込まれる分野と目されている。世界のテクノロジー大手や中国のインターネット大手各社が、AIを搭載したハードウェア開発に注力しており、市場投入が本格化してきた。
IDCのデータによると、2024年第3四半期の中国におけるAIグラス市場の出荷台数は、前年同期比で62.3%と大幅に増加した。この成長は、技術の成熟と消費者への認知度向上を背景にしている。
CESでも存在感、政府も後押し
米ラスベガスで開かれた世界最大級の技術見本市「CES 2024」では、50社以上のメーカーがAIグラスの新製品を展示し、中でも中国ブランドの存在感が際立った。Alibabaの「Quark(クオーク)AIグラス」や、ByteDanceのAIアシスタント「豆包(Doubao)」を搭載した製品などが注目を集めたと、複数の技術メディアが報じている。
中国政府も産業育成を強力に後押しする。2024年12月には、国家発展改革委員会と財政部が共同で発表した通知により、AIグラスが国の補助金対象品目に指定された。市場予測では、世界のAIグラス出荷台数は2028年までに3,500万台に達する見通しだ。
日本への影響と今後の展望
中国AIグラス市場の急拡大は、日本企業にとって二つの明確なリスクと一つの機会をもたらす。まず、前年同期比62.3%増という驚異的な成長率が示すように、中国はAIグラスの巨大なテストベッドとなり、AlibabaやByteDanceといった中国テック大手が先行者利益を享受する可能性が高い。これにより、日本企業がAIグラス関連のハードウェアやソフトウェア開発で後塵を拝し、グローバル市場での競争力を失うリスクがある。特に、中国政府がAIグラスを補助金対象に指定したことは、中国企業の技術開発と市場投入をさらに加速させ、日本企業が同分野で技術的優位を確立する機会を逸する可能性がある。
次に、CES 2024で中国ブランドの存在感が際立ったように、中国企業がAIグラスの国際標準やエコシステム形成を主導するリスクがある。AIアシスタント「豆包(Doubao)」を搭載した製品のように、中国独自のAIプラットフォームが普及すれば、日本企業が開発するAIサービスやアプリケーションが中国市場で受け入れられにくくなる。これは、日本企業が中国市場でAIグラス関連ビジネスを展開する際の大きな障壁となる。
一方で、2028年に世界で3,500万台規模に達するという市場予測は、日本企業にとって新たな部品供給や素材開発の機会を提供する。特に、AIグラスの小型化・軽量化・高機能化には、日本の精密部品や高性能素材が不可欠となる。中国企業が急速に市場を拡大する中で、日本企業は最終製品での競争ではなく、高付加価値なサプライチェーンの中核を担うことで、この成長市場の恩恵を受けることができる。