中国のAIグラス(スマートグラス)市場が、過当競争の様相を呈している。2024年には40を超える新製品が発表され、市場は急成長を遂げた。企業情報データベース「天眼查(Tianyancha)」によると、設立1年以内のAIグラス関連企業は1万社を超えており、プレイヤー同士の熾烈な競争が始まっている。

1万社超が乱立する中国市場

AIグラス市場は、その大きな市場規模と高い成長性から、中国のテクノロジー企業にとって新たな主戦場となっている。Alibabaグループやバイドゥ(バイドゥ)傘下のシャオドゥ、TCL傘下のレイニオ(RayNeo)、ロキッド(Rokid)といった主にプレイヤーは、AIグラスを次世代の「キラープロダクト」と位置づけ、エコシステムへの入り口となるデバイスの開発に注力している。

大手各社の戦略、三者三様の様相

中国大手各社の戦略は三者三様だ。Alibabaとシャオドゥは、AIグラスをエコシステムへのゲートウェイと位置づけ、プラットフォームへの利用者を増やす戦略を採る。一方、レイニオとロキッドは、スマートフォンと同様に単体で機能するスタンドアロン型デバイスとして開発を進めている。ファーウェイ(ファーウェイ技術)やシャオミ(シャオミ)は、既存のスマートフォンやIoTデバイスとの連携を重視し、自社エコシステムの拡張機能としてAIグラスを開発する戦略だ。

アップルの参入が市場の起爆剤に

アップルによる「Apple Vision Pro」の市場投入は、AIグラス市場全体に大きな影響を与えている。同社はこれまでもVR(仮想現実)やスマートウォッチの分野で市場を創出してきた実績があり、その参入は市場の成熟度を高め、他の企業の製品開発を加速させる起爆剤となることが期待されている。アップルの動向は、今後の市場の標準を方向づける可能性がある。

日本企業への示唆

中国AIグラス市場の過当競争は、日本企業にとって二つの具体的な影響をもたらす。まず、40を超える新製品が発表され、設立1年以内の関連企業が1万社を超えるという中国市場の爆発的成長は、部品供給企業に新たな機会を創出する。例えば、高精細ディスプレイや小型高性能バッテリー、AIチップなど、日本の得意とする精密部品メーカーは、RayNeoやRokidといった中国メーカーへの供給拡大を通じて、売上を伸ばす可能性がある。ただし、価格競争の激化は避けられず、技術優位性の維持とコスト削減の両立が求められる。

次に、Alibabaファーウェイといった中国大手企業がAIグラスを「キラープロダクト」と位置づけ、エコシステムへの入り口や拡張機能として開発を進める戦略は、日本の消費者向け電子機器メーカーにとって脅威となる。Apple Vision Proの市場投入が起爆剤となったように、中国市場で培われた技術や価格競争力を持つAIグラスが日本市場に流入する可能性があり、既存のスマートフォンやウェアラブルデバイス市場の競争が激化する。このため、日本のメーカーは単なるデバイス開発に留まらず、コンテンツやサービスとの連携を強化するなど、独自の付加価値戦略を早期に確立する必要がある。例えば、医療や教育分野など、特定用途に特化したAIグラスの開発は、ニッチながらも安定した市場を確保する上で有効な選択肢となるだろう。