AI(人工知能)と半導体分野を巡る世界的な投資競争が過熱し、韓国のサムスン電子が時価総額1兆ドルを突破した。米国ではAI開発企業Anthropicが巨額の投資計画を発表し、中国でもスタートアップが大型の資金調達に成功。米中を中心に技術覇権を巡る動きが加速している。

サムスン電子、時価総額1兆ドル突破 TSMCに次ぐ快挙

韓国のサムスン電子の時価総額が1兆ドル(約155兆円)の大台を突破した。AIブームを背景に、関連半導体の需要が世界的に急増していることが要因だ。東アジア企業で時価総額1兆ドルを超えるのは、半導体受託生産(ファウンドリ)最大手のTSMC(台湾積体電路製造)に次いで2社目となる。AIサーバーに不可欠なHBM(広帯域メモリー)など高性能メモリーの需要が、同社の業績を力強く牽引しているとみられる。

米国で巨額投資が加速 Anthropicは2000億ドル計画

米国ではAI関連の投資がさらに加速している。AI開発を手がけるAnthropicは、今後5年間でグーグルのクラウドサービスと半導体チップの利用に約2000億ドルを投じる計画だと報じられた。また、イーロン・マスク氏が率いるAI企業xAIは、テキサス州に550億ドルを投じ「Terafab」と名付けたスーパーコンピューター施設を建設する計画だ。光通信部品大手のLumentumも、AIデータセンター向け製品の需要が供給能力を大幅に上回っており、受注は2028年まで埋まっていると明らかにした。

中国スタートアップも追随 Moonshot AIは20億ドル調達

中国のAIスタートアップも米国の動きに追随し、大型の資金調達を相次いで発表している。大規模言語モデル(LLM)『Kimi』を開発するMoonshot AIMoonshot AI(月之暗面))は、評価額200億ドル超で新たに20億ドルの資金調達を完了する見通しだ。この調達はフードデリバリー大手の美団(メイトゥアン)などが主導する。また、レベル4の自動運転技術を開発するWhite Rhino(白犀牛科学技術)も、シリーズC1ラウンドの資金調達を完了したと発表。世界的な物流企業などが出資し、技術開発とグローバル展開を加速させている。

日本への影響と示唆

サムスン電子の時価総額1兆ドル突破と、米中におけるAI・半導体投資の過熱は、日本企業にとって二つの明確なリスクと機会を提示する。

第一に、HBMなど高性能メモリーの需要急増は、日本の半導体製造装置・素材メーカーにとっての機会である。例えば、東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった企業は、サムスン電子やTSMCの設備投資拡大の恩恵を直接的に受ける。特に、Anthropicが今後5年間で約2000億ドルを投じる計画や、xAIがテキサス州に550億ドルを投じる「Terafab」建設は、これらの日本企業にとって巨大な需要創出を意味する。高性能半導体の製造には日本の精密技術が不可欠であり、サプライチェーンにおける日本の重要性が再認識される。

第二に、中国AIスタートアップの台頭は、日本市場への浸透リスクと、協業による機会の両面を持つ。Moonshot AIが20億ドルの資金調達を完了し、美団が主導するなど、中国国内の巨大な資金と市場を背景に、彼らの技術は急速に進化する。日本のAI開発企業は、中国勢の技術力向上により競争が激化するリスクに直面する。一方で、White Rhinoのように世界的な物流企業が出資する自動運転技術は、日本の自動車産業や物流業界にとって、新たな技術提携や共同開発の可能性を秘める。特に、中国の自動運転技術は実証実験のデータ量が豊富であり、日本企業が協業することで、開発期間の短縮やコスト削減に繋がる可能性がある。