中国のAI(人工知能)スタートアップ、MINIMaxの企業価値評価が投資家の注目を集めている。ゴールドマン・サックスは、同社の企業価値を418億ドルと算出するレポートを発表。急成長する中国AI市場の将来性を示す分析として、業界内で大きな話題となっている。

MINIMaxは驚異的な成長を遂げており、2023年の売上高は7903万8000ドルで、前年比158.9%増を達成した。この急成長を背景に、同社の評価額は高騰しており、最新の資金調達ラウンドでは2305億香港ドル(約4.6兆円)に達したと報じられている。同様の急成長と高い評価額は、競合のZhipu AI(智譜)AI(Zhipu AI)など他の中国AI企業でも見られる現象だ。

ゴールドマン・サックスの価値評価手法

ゴールドマン・サックスはMINIMaxの価値評価において、従来のSaaS企業向けの評価モデルではなく、DCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)法を採用した。これは、将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算出する手法で、成長初期段階にあるテクノロジー企業の評価に適している。

分析では、MINIMaxの成長を2段階で予測している。第1段階を2030年までの詳細予測期間、第2段階を2035年までの安定成長期間と設定。このモデルに基づき、将来の収益性を詳細に試算した。

2030年の売上高は116億ドルと予測

ゴールドマン・サックスの予測によると、MINIMaxは2026年から2030年にかけて、世界のLLM(大規模言語モデル)市場におけるシェアを毎年0.3〜0.7ポイント拡大し、2030年までに市場シェア2.5%を達成する見込みだ。これにより、2030年の売上高は116億ドルに達するとされる。

黒字化の転換点は2029年と予測。2030年には調整後純利益が12億7800万ドル、フリーキャッシュフローが7億9400万ドルと、いずれもプラスに転じると試算している。さらに、2035年時点の調整後EBIT利益率は21%に達する見通しだ。

これらの将来キャッシュフローと永続価値を、加重平均資本コスト(WACC)12%で割り引いて算出した企業価値は410億6700万ドル。これに同社の純キャッシュを加えた株主価値が418億ドルとなる。この分析は、ゴールドマン・サックスが伝えたものだ。

結論:日本への示唆

MINIMaxの418億ドルという企業価値評価は、日本企業にとってAI分野における競争激化と新たな提携機会を示唆する。まず、ゴールドマン・サックスが2030年の売上高を116億ドルと予測するMINIMaxの急成長は、中国AI企業の技術力と市場獲得能力が国際的に評価されている証左である。日本企業がAI開発で世界市場を視野に入れる場合、中国勢の技術進歩と市場戦略をこれまで以上に詳細に分析し、自社の競争優位性を再構築する必要がある。

次に、MINIMaxやZhipu AIといった中国AIスタートアップが巨額の資金調達と高い評価額を獲得している事実は、日本国内のAIスタートアップ育成における課題を浮き彫りにする。日本のスタートアップエコシステムは、大規模な資金調達や迅速な事業拡大において中国勢に後れを取る傾向がある。日本政府やVCは、AI分野におけるリスクマネー供給の拡充と、グローバル市場を見据えた成長戦略の支援を強化しなければ、国際競争でさらに劣勢に立たされる可能性がある。

最後に、DCF法を用いたMINIMaxの評価は、将来のキャッシュフロー創出能力を重視する投資トレンドを示している。日本企業が中国市場でAI関連事業を展開する際、単なる技術導入に留まらず、中国企業との協業を通じて、現地のデータと市場特性を深く理解し、具体的な収益モデルを構築する機会が生まれる。例えば、日本の製造業がMINIMaxのAI技術を導入し、中国国内のサプライチェーン最適化や顧客体験向上に活用することで、新たな事業価値を創造できる可能性も考えられる。