中国の動画配信大手iQIYI(愛奇芸)とEC大手のJD.com(京東)(JD.com)は、両社の年間会員権をセットで提供する共同キャンペーンを開始した。プラットフォーム間の顧客基盤を相互に活用し、ユーザーの囲い込みを強化する狙いだ。この提携は、中国の巨大IT企業によるエコシステム構築の新たな動きとして注目される。

最大61%割引、iQIYIとJD.com(京東)が共同会員プログラム

今回のキャンペーンでは、iQIYIのプラチナ会員プランと「JD.com(京東)PLUS」の年間会員権セットが、通常価格594元(約1万2200円)から約61%割引の230元(約4700円)で提供される。さらに、iQIYIのゴールド会員権5日分も付与される。

また、iQIYIのゴールド会員プランと「JD.com(京東)PLUS」のセットも、通常価格258元(約5300円)から約39%割引の158元(約3200円)となる。このプログラムは、動画コンテンツとオンラインショッピングという日常的なサービスを組み合わせることで、顧客の利便性と定着率を高めることを目指している。

購入時の注意点と利用条件

本プログラムの購入にあたり、いくつかの条件がある。iQIYIとJD.com(京東)のアカウントに登録された電話番号が同一である必要がある。また、iQIYIのゴールド会員プランはテレビ端末での視聴に対応しておらず、テレビで利用する場合はプラチナ会員プランの選択が必要だ。

JD.com(京東)の発表によると、JD.com(京東)PLUS会員の有効化権限がないアカウントでは購入できず、会員資格をアカウントに適用できないため注意が必要だとしている。

家事代行や健康診断など生活サービスも提供

この共同会員プログラムには、動画視聴やECでの優待に加え、生活関連サービスで利用できるポイント特典も含まれる。貯めたポイントに応じて、多様なサービスと交換できる仕組みだ。

  • 5ポイント: 2時間の家事代行サービス(多くの都市で時給40元かなり)と交換できる。
  • 3ポイント: 衣類クリーニング(2回まで、ダウンジャケットも対象)や、健診機関「愛康国賓(iKang Guobin)」での基礎的な健康診断と交換できる。
  • 1ポイント: 無料配送サービス(4回まで、JD.com(京東)の配送サービスで基本的に料金が無料)や洗車サービス(1回)と交換できる。

日本の関連性

iQIYIとJD.comの提携は、中国市場における日本企業の競争環境に直接的な影響を及ぼす。まず、日本のコンテンツプロバイダーやEC事業者は、中国大手プラットフォームが提供する「オールインワン」型サービスとの差別化を迫られる。特に、iQIYIのプラチナ会員とJD.com PLUSの年間会員権セットが通常価格594元から約61%割引の230元で提供されるような低価格攻勢は、単一サービスで勝負する日本企業にとって脅威となる。

次に、この提携は中国市場における顧客の囲い込み戦略の高度化を示唆する。JD.com PLUS会員向けの家事代行や愛康国賓での健康診断といった生活関連サービスの提供は、単なるECや動画配信に留まらない顧客の生活全般をカバーするエコシステム構築を目指している。これは、中国で事業展開する日本の消費財メーカーやサービス業が、自社製品・サービスの単体販売だけでなく、現地の巨大プラットフォームが提供する複合的な顧客体験の一部として組み込まれる可能性を考慮する必要があることを意味する。

最後に、中国におけるデータ連携と顧客情報の一元管理の進展は、日本企業が中国市場でマーケティング戦略を練る上で重要な要素となる。iQIYIとJD.comのアカウントに登録された電話番号が同一である必要があるという条件は、両社が顧客データを連携させ、よりパーソナライズされたサービス提供を目指していることを示している。これは、日本企業が中国市場で顧客データを収集・分析し、効果的なマーケティングを行う上での新たな課題と機会を提示する。