Alibabaは、同社のAIアシスタント「千問 (Qwen)」に、ユーザーの指示でECサイトでの買い物や旅行予約などを自動実行する新機能を追加した。2024年初めに発表されたアップグレードによるもので、AIが単なる対話相手から具体的なタスクをこなす「エージェント」へと進化する動きが加速している。

「タスクアシスタント」で複数サービスを自動操作

従来のAIアシスタントは、質問に答えたり情報を提供したりする機能が中心で、ユーザーが望む具体的なタスクを直接実行する機能には課題があった。

今回「千問」に実装された「タスクアシスタント」機能は、この課題を解決するものだ。Alibabaグループが運営するECサイトTaobao(淘宝) (タオバオ)」や決済サービスの「Alipay(支付宝) (アリペイ)」、旅行予約プラットフォーム「飛猪 (フリギー)」、地図サービス「高徳地図 (Amap)」など、複数の主にサービスと連携。これにより、ユーザーが「大阪に行きたい」と指示するだけで、AIが自動でフライト情報を検索し、航空券を予約するといった一連の操作を実行できる。

「AIエージェント」の実現に向けた布石

今回のアップグレードは、AIアシスタントがより高度な「AIエージェント」へと進化する未来を示唆している。将来的には、AIがユーザーのスケジュール管理や健康状態のモニタリングなど、さらに複雑でパーソナライズされたタスクを自律的に処理するようになることが期待される。

Alibabaによると、この機能はまだ初期段階にある。今後、より高度な機能を実現するためには、膨大なデータに基づくアルゴリズムの継続的な改善が必要となる。中国の巨大IT企業が自社サービス群を連携させたAIエージェント開発で先行しており、今後の動向が注目される。

日本への影響

AlibabaのAI「千問」がTaobaoやAlipayと連携し、ユーザーの指示でフライト予約まで自動実行する機能は、日本企業にとって二つの具体的な影響をもたらす。一つは、中国市場における日本製品の販売戦略の見直しだ。これまで日本企業は、TaobaoやTmallといったECプラットフォームを通じて製品を販売してきたが、今後はAIがユーザーの購買行動を自動化することで、製品の露出方法やプロモーション戦略が変化する。例えば、AIが推奨する商品リストに載るためのデータ分析や、AIフレンドリーな商品情報提供が重要になる。

もう一つは、日本の旅行・観光産業への影響である。Amapと連携したフライト予約機能は、中国からの訪日旅行客の行動を大きく変える可能性がある。AIが自動で航空券や宿泊施設を予約することで、従来のOTA(オンライン旅行代理店)や旅行会社の役割が縮小し、AIが推奨する日本の観光地や体験が選ばれる傾向が強まる。日本の観光業界は、AIが収集する中国人の旅行嗜好データを活用し、AIに推奨されやすい旅行プランやコンテンツを開発する必要がある。

さらに、Alibabaが「AIエージェント」の実現に向けた布石と位置付けている点も重要だ。これは、中国の消費者がAIを通じて生活のあらゆる側面を管理する未来を示唆しており、日本企業は中国市場への参入や既存事業の展開において、AIとの連携を前提としたビジネスモデルの構築を迫られる。例えば、日本の金融機関はAlipayのような決済サービスとの連携を強化し、AIを介した送金や資産運用サービスへの対応を検討すべきである。