トランプ米大統領は2025年4月9日、米国の海事産業再興を目的とした行政令『米国の海事における主導的地位の再興』に署名した。これに基づき策定された「海事行動計画」は、造船業の強化や国家安全保障の向上を目指すものだ。
計画の4つの柱
計画は主に4つの柱で構成される。第一に造船業の生産能力強化、第二に船員の教育・訓練体制の改革、第三に海事産業基盤の保護、第四に国家安全保障と産業の強靭性向上だ。
政府の調達プロセス近代化や規制緩和を通じ、造船ペースの加速とコスト削減を図る。また、省庁間の連携を強化し、米国製の船舶や造船所、船員に安定した資金支援と市場アクセスを提供することも盛り込まれた。
産業への影響と新たな措置
この計画は米国の海事産業に大きな影響を及ぼすとみられる。特に、外国で建造された商船に対する統一料金の徴収や、陸路で米国に輸入される商品への少額課税などが含まれる。
これらの措置は、関税徴収や国内産業保護を目的としている。これまで米通商法301条の制裁対象だった中国関連船舶への措置が、米国製以外のすべての船舶に拡大されることになるため、世界の海運業界に波紋を広げる可能性がある。
まとめ:日本への示唆
トランプ氏の「海事行動計画」は、日本の海運・造船業界に直接的な影響を及ぼす。特に「外国で建造された商船に対する統一料金の徴収」は、中国で建造された船舶を多く利用する日本の海運会社にとって、運航コスト増を招く。例えば、日本郵船や商船三井といった大手海運会社が米国航路で運航する船舶の多くは、価格競争力から中国や韓国で建造されているため、新たな課金は収益を圧迫する要因となる。
また、「米国製以外のすべての船舶に拡大される」措置は、日本造船連合会に加盟する国内造船所が手掛ける船舶の米国市場での競争力を低下させる。これまで中国や韓国製船舶に比べ高価格だった日本製の船舶は、米国での課金制度導入により、さらに価格競争で不利になる可能性がある。これにより、日本から米国への船舶輸出が減少し、国内造船所の受注環境が悪化するリスクがある。
一方で、米国の造船能力強化は、日本企業が米国市場で新たな機会を見出す可能性も秘める。例えば、米国の造船所が技術提携や部品供給を必要とする場合、川崎重工業や三菱重工業といった日本の重工業メーカーが持つ高度な造船技術や関連機器が、新たなビジネスチャンスに繋がり得る。ただし、これは米国が自国産業保護を優先する中で、日本企業にどれだけの市場アクセスを許容するかに依存する。