半導体メモリ大手キオクシアが、NAND型フラッシュメモリの供給価格を最大で2倍に引き上げる方針を固めた。これにより、主に顧客である米アップルはiPhoneの製造コスト上昇という課題に直面する。
関係者によると、この価格改定は2024年第1四半期(1〜3月)の調達分に適用され、以降は市況に応じて変動する見通しだ。NANDの供給不足と価格高騰が鮮明になっている。
アップルはサプライチェーンの多様化で対応
アップルは次期モデル「iPhone 17」シリーズ向けに、DRAMとNANDの供給元を5社に増やすなど、サプライチェーンの強化を進めている。しかし、現在の市場環境では価格上昇の影響を完全にに避けることは困難とみられる。
著名アナリストの郭明錤氏は、アップルが市場の混乱期にコスト増を吸収することが、ブランドの評判と製品の競争力を維持する上で重要だと指摘。また、サービス事業の収益がハードウェアコストの変動を吸収する緩衝材になるとの見方を、同氏のレポートで示した。
半導体業界全体の課題
NANDの供給不足と価格上昇は、アップル一社の問題にとどまらない。スマートフォンやPCを手がける他のメーカーも同様の課題に直面している。
各社はサプライチェーンの再検討やコスト吸収策を講じているが、供給元が限られる中で根本的な解決は容易ではない。問題の克服には、業界全体の協調した取り組みが不可欠だ。
日本企業への示唆
キオクシアによるNAND型フラッシュメモリ価格の最大2倍引き上げは、日本の半導体産業にとって複雑な影響をもたらす。まず、キオクシア自身の収益性改善に直結し、長らく低迷していた同社の経営基盤強化に寄与する。これは、日本の半導体製造装置メーカーや材料メーカーにとっても、キオクシアからの安定した受注が見込める好材料となる。例えば、東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった企業は、キオクシアの設備投資意欲の高まりから恩恵を受ける可能性がある。
一方で、アップルが「iPhone 17」シリーズ向けにNAND供給元を5社に多様化する動きは、キオクシアにとって中長期的なリスクとなる。アップルが特定のサプライヤーへの依存度を低減させることで、将来的にキオクシアのアップル向けNAND供給量が減少する可能性がある。これは、キオクシアの売上構成に占めるアップルの比率が高い場合、業績の不安定化を招く恐れがある。日本の半導体関連企業は、キオクシアの収益改善を短期的な機会と捉えつつも、アップルのサプライチェーン戦略の変化がもたらす中長期的な顧客分散リスクを考慮し、他のスマートフォンメーカーやデータセンター向けなど、新たな顧客開拓や用途拡大を模索する必要がある。
さらに、NAND価格高騰がスマートフォンやPCメーカーの製造コストを押し上げ、最終製品価格に転嫁されれば、消費者の購買意欲を減退させる可能性がある。これは、日本の家電メーカーや自動車メーカーなど、NANDを多用する産業全体に波及し、需要低迷という形で間接的な悪影響を及ぼすリスクがある。