中国の食品大手、中飲巴比食品股份有限公司(通によると:バビ食品)が発表した2025年度決算は、売上高が前年比11.22%増18.59億元(約390億円)に達し、2桁成長を維持した。一方で、純利益は投資収益の減少が響き、前年比でわずかに減少して2.73億元(約57億円)となった。同社は積極的なM&Aと店舗網拡大で本業の成長を確保しつつ、財務構造の転換を急いでいる。

なぜ今、重要か

今回の決算は、ゼロコロナ政策終了後の中国消費市場の回復基調と、その中で激化する競争環境を象徴している。中国の中食・外食市場は依然として巨大な成長潜在力を秘めているが、単純な規模拡大だけでは持続的な成長が困難になりつつある。バビ食品の事例は、本業の競争力強化(M&A、サプライチェーン)と、財務リスク管理という2つの側面から成長戦略を再構築する中国企業の典型例だ。

同社の戦略は、日本の食品・外食関連企業にとっても重要な示唆を与える。第一財経の報道によると、中国の朝食市場だけでも2兆元(約42兆円)規模に達するとされ、バビ食品のような有力プレイヤーの動向は、市場全体のトレンドを占う上で見逃せない。本業回帰と財務健全化への舵取りが成功するかは、同社の今後の株価や業界内での地位を大きく左右するだろう。

投資収益の変動が利益を圧迫

純利益が伸び悩んだ主な要因は、保有する飲料大手、東鵬飲料の株価変動だ。同社の決算報告によると、株式保有に伴う投資収益が前年比で9,382万元(約19.7億円)減少したことが直接的な打撃となった。

バビ食品は、東鵬飲料が2021年に上海証券取引所に上場する以前から同社株式を戦略的に保有していた。一時は東鵬飲料の時価総額が1,000億元を超え、バビ食品の連結決算に多大な利益貢献をもたらした。しかし、バビ食品の経営陣は、このような市況に左右される投資収益を一時的なものと位置づけており、依存度を段階的に引き下げる方針を明確にしている。今回の減益は、本業への集中を強めるための過渡期的な現象と捉えることができる。

M&Aと店舗拡大で本業は2桁成長

財務面での課題とは対照的に、本業である食品事業は力強い成長を続けている。その牽引役となっているのが、M&Aを通じた事業基盤の強化だ。2025年度には、南京を拠点とする同業「青露」や、浙江省で強みを持つ「饅郷人」といった地域有力企業を買収。これにより、華東地域におけるドミナント戦略を加速させ、フランチャイズ網の密度と市場シェアを同時にに高めた。

店舗数の拡大も著しく、2025年末時点で総店舗数は5,000店を突破したとみられる。さらに、2026年には新たに1,000店舗を出店する計画を掲げており、成長ペースを緩める気配はない。新製品開発やサプライチェーン管理の高度化にも注力しており、原材料コストの上昇を抑制しつつ、経営効率の向上を実現したと報告されている。

ビジネスモデルとサプライチェーン戦略

バビ食品の強みは、効率的な「中央キッチン+コールドチェーン物流+フランチャイズ店舗」というビジネスモデルにある。このモデルは、品質の標準化と迅速な店舗展開を両立させる上で極めて有効だ。

具体的には、まず中央キッチンで肉まんや点心などの主に製品を大量に生産・半加工し、コストを大幅に削減する。その後、製品は自社のコールドチェーン(低温物流網)を通じて、各フランチャイズ店舗へ毎日配送される。店舗側は調理工程が最小限で済むため、小規模なスペースでも運営でき、人件費も抑制できる。この仕組みが、年間1,000店舗という驚異的な出店スピードを可能にしている。

さらに、同社はデジタル技術の活用も進めている。全店舗に導入されたPOSシステムから得られる販売データを分析し、需要予測や新製品開発に活用。また、WeChatのミニプログラムなどを通じたオンライン注文やデリバリーサービスも強化しており、消費者の利便性を高めることで顧客の囲い込みを図っている。

まとめ:日本への示唆

バビ食品の決算は、中国食品市場におけるM&A戦略と投資環境の変化が日本企業に与える影響を示唆する。まず、バビ食品が南京の「青露」や浙江省の「饅郷人」といった地域ブランドを買収し、フランチャイズ網を拡大している点は、日本食品メーカーの中国市場参入戦略に影響する。中国では地域性が強く、全国一律のブランド展開は難しい。日本企業が中国市場で事業拡大を目指す際、地域に根差したM&Aや提携が効果的な選択肢となる可能性が高い。

次に、バビ食品の純利益が東鵬飲料の株価変動による投資収益の減少で圧迫された事実は、中国市場における多角化経営のリスクを浮き彫りにする。日本企業が中国での事業展開において、本業以外の投資収益に過度に依存する戦略は、市場変動リスクを増大させる。特に、中国株式市場の変動性は高く、投資収益を安定的な収益源と見込むのは危険である。

最後に、バビ食品が2026年に1000店舗の新規出店を計画していることは、中国の食品小売市場における競争激化を意味する。同社がサプライチェーン管理の高度化で原材料コスト抑制を図るように、中国市場で事業を展開する日本企業も、コスト競争力と効率的なサプライチェーン構築が喫緊の課題となる。価格競争に巻き込まれないためには、高付加価値製品の開発や、現地のサプライヤーとの連携強化が不可欠となる。

出典・参考

  • [中飲巴比食品] (2026-04-27) "2025年年度報告"
  • [第一財経] (2026-04-28) "巴比食品去年売上高增超11%净利微降、拟10派5.5元"
  • [Euromonitor International] (2025) "Consumer Foodservice in China"