バングラデシュで2024年1月に行われた総選挙は、シェイク・ハシナ首相率いる与党アワミ連盟が圧勝し、ハシナ氏の5期目続投が確定した。しかし、最大野党バングラデシュ民族主義党(BNP)が選挙をボイコットしたため、投票率は約40%と低迷。欧米諸国からは選挙の公正性に懸念が示される一方、インドと中国はハシナ政権の継続を歓迎しており、同国の地政学的な立ち位置が改めて注目されている。
野党不在で与党が圧勝
今回の総選挙で、アワミ連盟は全300議席のうち220議席以上を獲得し、圧倒的な勝利を収めた。BNPをはじめとする主に野党は、ハシナ政権下での選挙は公正に行われないとして、中立的な選挙管理内閣の設置を要求していたが、これが受け入れられなかったため選挙をボイコットした。米国務省は「自由で公正なものではなかった」と批判的な声明を発表している。
ハシナ首相は選挙後の記者会見で、「選挙を阻止しようとするテロ行為にもかかわらず、国民が投票した」と述べ、選挙の正当性を主張した。政権の安定が確保されたことで、これまでの経済成長路線と外交政策が継続される見通しだ。
中国からの兵器調達と軍事近代化
ハシナ政権下で、バングラデシュは「フォース・ゴール2030」と名付けた軍の近代化計画を推進しており、その中で中国との軍事協力関係を深めている。特に注目されるのは、2017年に中国から導入した2隻の035G型(明王朝級)潜水艦だ。これにより、バングラデシュはベンガル湾における限定的ながらも海中戦力を保有するに至った。
この動きは、伝統的な友好国であり、地域の覇権を目指すインドにとって安全保障上の懸念材料となっている。ロイター通信によると、インドはバングラデシュの中国傾斜を警戒しつつも、ハシナ政権との良好な関係維持に努めている。バングラデシュは、巨大な隣国であるインドと、経済・軍事支援を拡大する中国との間で巧みな均衡外交を展開しているのが現状だ。
日本市場への影響
バングラデシュ総選挙におけるハシナ政権の継続は、日本の南アジア戦略に直接的な影響を及ぼす。まず、同国が推進する「フォース・ゴール2030」計画下での中国製兵器導入、特に2017年に導入された2隻の035G型(明王朝級)潜水艦は、ベンガル湾における中国のプレゼンス拡大を意味する。これは、日本のシーレーン防衛上、インド洋から南シナ海に至る海上交通路の安定性に対する潜在的なリスクとなる。
次に、バングラデシュの中国傾斜は、日本のインフラ輸出戦略に影響を及ぼす可能性がある。日本はこれまでバングラデシュに対し、円借款を通じた橋梁や港湾開発などのインフラ支援を行ってきた。しかし、中国が軍事・経済両面で影響力を強める中、日本のプロジェクトが中国の「一帯一路」構想と競合し、受注競争が激化する可能性が高まる。アワミ連盟が全300議席中220議席以上を獲得した盤石な政権基盤は、中国との関係深化をさらに加速させるだろう。
最後に、日本の対インド外交戦略にも影響が及ぶ。インドはバングラデシュの中国傾斜を警戒しており、両国間の関係は複雑化している。日本は「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進する上で、インドとの連携を重視しているが、バングラデシュを巡る地政学的バランスの変化は、インドの対中戦略に影響を与え、結果として日本の地域戦略にも調整を迫る可能性がある。