中国で5月4日の「青年の日」に合わせ、新興メディア『有三思 U Sense』が創刊された。同メディアは創刊メッセージで、年齢を問わず誰もがキャリアを模索する『青年』であると定義し、その形成に不可欠な思考法として3つの「センス」を提唱。努力や才能とは異なる、物事の本質を捉える指針として位置づけている。
最上級の賛辞としての「センス」
同メディアの創業者は、ブランド名の由来を自身のコンサルティング業界での経験から語った。当時、上司が部下を評価する最上級の賛辞は「センスがある」という言葉だったという。これは『手取り足取り教えなくても、先輩と同じレベルで思考できる能力』を凝縮した表現であり、テクノロジー分野の記者に転身した現在も、人や組織を分析する上での指針となっていると説明している。
センスを構成する3つの要素
『有三思』は、「センス」を3つの要素に分解して解説している。
第一の「インフォメーション・センス」は、情報過多の現代において、ノイズから重要なシグナルを識別し、事象の背後にある本質的な「なぜ」を問い続ける能力を指す。
第二の「ソーシャル・センス」は、ビジネスや人間関係において、進むべき時と引くべき時を見極める判断力や、相手の真意を汲み取る対人感覚である。
第三の「ディレクション・センス」は、指示待ちではなく、自ら課題を発見し、市場の動向を先読みして全体像を把握する自律的な行動力だ。これら3つが揃って初めて、真に「センスがある」状態に至ると同メディアは位置づけている。
キャリア形成を物語の「三幕構成」になぞらえ解説
さらに同メディアは、キャリア形成をアリストテレスが『詩学』で提唱した物語の「三幕構成」になぞらえている。初心を抱く『発端』、競争の中で専門性を磨く『葛藤』、そして独自の価値を見出し時流に乗る『解決』の三幕だ。この各段階を繋ぐのが『選択』であると指摘している。
創刊メッセージでは、映画『トレインスポッティング』を引用し、社会が用意したレールを単に拒絶して虚無に陥るのではなく、自らの意思で『何か別のもの』を選択することの重要性を強調。読者に対し、自らのキャリアを主体的に見つめ直すよう促している。
日本への影響と示唆
中国の新興メディア『有三思』が提唱する「3つのセンス」は、日本企業が抱える人材育成の課題に対し、具体的な示唆を与える。特に「インフォメーション・センス」は、情報過多な現代において、日本企業がDX推進で直面するデータ活用能力の欠如を補完する視点となる。例えば、膨大な社内データから事業機会の本質的な「なぜ」を問い続ける能力は、既存事業の変革や新規事業創出に直結する。
また、「ソーシャル・センス」は、日系企業の海外展開、特に中国市場における現地人材との協業において重要性を増す。中国のビジネス環境では、日本以上に人間関係や状況判断が重視されるため、相手の真意を汲み取り、進むべき時と引くべき時を見極める判断力は、M&A後の統合や合弁事業の成功に不可欠だ。
さらに、「ディレクション・センス」は、日本企業に不足しがちな自律的な行動力と市場の先読み能力を育成する上で有効である。指示待ちではなく、自ら課題を発見し、市場の動向を先読みして全体像を把握する人材は、変化の激しい中国市場で競争優位を確立するために不可欠だ。例えば、ソニーやトヨタといった日本を代表する企業が中国市場で新たな事業モデルを模索する際、こうした「センス」を持つ現地社員の育成が、事業の成否を分ける可能性が高い。これらの「センス」を人材育成の軸に据えることは、日本企業が中国市場で持続的な成長を遂げるための具体的な道筋となるだろう。