中国の主に株式市場であるA株に上場する企業の2024年第1四半期(1-3月期)決算が出揃い、全体の純利益が前年同期比7.2%増と、2023年通年の3.9%増から伸びが加速した。特にAI(人工知能)関連のハイテク企業が業績を大きく伸ばし、景気回復の牽引役となっている。UBS証券は、企業の収益力改善を背景に、今後の株価上昇は利益成長が主導するとの見方を示した。海外投資家からは、地政学リスクが高まる中で中国資産を「安全資産」と見なす動きも出ており、関心が高まっている。

ハイテク主導で利益回復が鮮明に

4月末時点で、A株上場企業5507社のうち99.9%以上が第1四半期決算を発表した。このうち約52%にあたる2846社が増益を確保した。市場全体を牽引したのは非金融セクターで、利益は前年同期比11.8%増と、2023年通年の0.8%増から大幅に改善した。一方、金融セクターは2.2%増にとどまった。特に、新興ハイテク企業が多く上場する「ChiNext(創業板)」と「STAR Market(科創板)」の利益成長はそれぞれ23%、205%に達し、政府が推進する「新たな質の生産力」政策が企業の収益拡大に繋がっていることを示した。

AI需要と「過当競争是正」が追い風

UBS証券の中国株式戦略アナリスト、孟磊氏によると、企業の利益率が2020年以来の低下傾向から改善に転じており、経済の総需要と企業の収益力が回復していることがうかがえる。この背景には2つの大きな要因がある。一つは、世界的なAIブームと中国国内の「国産化・自主制御」方針がハイテク分野の需要を押し上げていることだ。AI関連のコンピューター、電子、電力設備の各セクターは、それぞれ124%、74%、53%という高い利益成長を記録した。もう一つは、政府が進める「過当競争の是正(反消耗戦)」が、企業の価格決定力を高め、生産者物価指数(PPI)の上昇を通じて中・上流セクターの利益回復を後押ししていることである。

海外勢は「安全資産」と評価、関心高まる

UBSグローバル・金融市場部の中国責任者、房東明氏は、国際市場で中国資産への関心が継続的に高まっていると指摘する。世界的な不確実性や地政学的な変動が激化する中、中国が持つ強固な産業チェーン、安定した政策、多様なエネルギー構造などが評価され、中国資産はリスクヘッジの効く「安全資産(避難港)」と見なされ始めているという。房氏によると、海外投資家は特に3つのテーマに注目している。①AIイノベーションと関連ハイテク産業、②競争力のある中国企業の海外展開、③「過当競争の是正」がもたらす新たな投資機会、である。UBSはこれらの好材料を踏まえ、2024年通年のA株全体の利益成長率予測を従来の8%から11%へと引き上げた。今後の中国市場の動向は、日本企業のサプライチェーンや事業戦略にも影響を与えるため、引き続き注視が必要だ。