中国でAI生成コンテンツ(生成AIコンテンツ(AIGC))を活用したアニメ映画の制作が本格化している。中国初となる劇場公開AIアニメ映画『団円令』の試写会が開催されたほか、全工程をAIで制作する『紅孩兒:赤焰之心』も発表された。制作期間の大幅な短縮を実現しており、コンテンツ産業に大きな変革をもたらす可能性がある。

中国初の劇場公開AIアニメ『団円令』

中国初となる劇場公開AIアニメ映画『団円令』は、2025年12月20日に北京で試写会が行われた。制作には、国営メディアのチャイナ・メディア・グループ(CMG)が開発した「CMGメディアコンテンツ大規模モデル」が使用され、全編の制作がAIによって行われた。

この技術により、従来のアニメ制作における課題であったキャラクターデザインの一貫性、シーン間の連続性、細やかな表情の表現などが解決されたという。通常2〜3年を要する制作期間を5〜6カ月に短縮し、効率と品質の両立を目指している。

全工程AI制作のアニメ『紅孩兒』

一方、上海市松江区でクランクイン式典が行われた『紅孩兒:赤焰之心』(以下『紅孩兒』)は、脚本段階からAIが参加する、全工程AI制作のアニメ映画だ。こちらも「CMGメディアコンテンツ大規模モデル」が活用される。

この大規模モデルは、CMGと上海AI研究所が2023年7月に共同で発表したもので、メディアコンテンツ制作に特化している。同モデルは2024年に放送された中国初のAI生成による連続アニメ『千秋詩頌』でも重要な役割を果たしたと、新華社通信などは伝えている。

日本への影響

中国のAIアニメ映画本格化は、日本のコンテンツ産業に直接的な競争圧力と新たな協業機会をもたらす。まず、制作期間の劇的な短縮は、日本のスタジオにとって脅威だ。例えば、『団円令』が従来の2〜3年を要する制作を5〜6カ月に短縮した事実は、中国が低コストで大量のコンテンツを市場に投入する可能性を示唆する。これにより、特に海外市場での日本アニメの競争優位性が低下するリスクがある。

次に、CMGが開発した「CMGメディアコンテンツ大規模モデル」のようなAI技術の進化は、日本のクリエイターがAIを単なるツールとしてではなく、共同制作者として捉え直す必要性を突きつける。キャラクターデザインの一貫性や表情の細やかさといった、従来職人技に依存していた領域がAIで解決されつつあるため、日本のアニメ制作現場は、AIが担う領域と人間が注力すべき領域を再定義し、生産性向上と差別化を図る必要がある。

最後に、中国市場におけるAIアニメの成功は、日本企業にとって新たなビジネスモデルのヒントとなる。例えば、日本のAI技術企業やアニメスタジオは、中国のAIGC技術と連携し、グローバル市場向けのコンテンツを共同開発する機会を探るべきだ。特に、日本のアニメIPと中国のAI制作能力を組み合わせることで、これまでリーチできなかった層へのアプローチや、新たな収益源の創出が可能になる。ただし、知的財産権の保護や技術流出のリスクには細心の注意が必要となる。