中国の習近平総書記は、重要経済政策を決定する中央経済業務会議で演説し、2024年の経済運営方針を示した。外部環境の不確実性や国内の構造的な課題に直面する中、伝統産業の高度化と人工知能(AI)など新興産業の育成を両輪で進め、「質の高い発展」を推進する姿勢を鮮明にした。新華社通信が報じた。

伝統産業の転換と高度化

習氏は、中国経済の基盤である伝統産業の転換が不可欠であるとの認識を示した。技術革新を通じた産業の高度化を重視する方針で、今年に入り複数回にわたり関連企業を視察し、現場指導を行っている。これは、過剰生産能力などの課題を抱える鉄鋼や化学といった分野で、デジタル化やグリーン化を推進し、国際競争力を高める狙いがあるとみられる。

AIなど新興産業の戦略的育成

新たな成長エンジンとして、人工知能(AI)や「未来産業」と位置づける分野の育成を急ぐ考えを強調した。習氏は、党の最高指導部である中央政治局の集団学習の場や、上海のAIモデル開発拠点「模速空間(ModelScope)」の視察などを通じて、新興産業の発展を直接指導している。次世代の技術覇権をめぐる国際競争を念頭に、国家主導で研究開発と実用化を加速させる構えだ。

「経済大省」に課せられた役割

地域経済に関しては、広東省や江蘇省などの「経済大省」が、国全体の経済を支える「安定の礎」としての役割を果たすべきだと指示した。これらの経済的に体力のある省が率先して成長を牽引し、他地域との連携を深めることで、国内経済全体の安定と発展を図ることを求めた。

日本への影響

習近平総書記が中央経済業務会議で示した方針は、日本企業にとって事業戦略の見直しを迫る。特に、伝統産業のデジタル化・グリーン化推進は、日本の産業機械メーカーや環境技術企業にとって新たなビジネス機会となる。例えば、過剰生産能力に悩む中国鉄鋼産業がデジタル化を進める際、日本の高精度センサー技術や自動化ソリューションの需要が高まる可能性がある。

一方で、AI分野における国家主導の育成強化は、日本企業にとって脅威となりうる。習氏が直接指導した上海の「模速空間(ModelScope)」のようなAIモデル開発拠点が急速に成長すれば、日本のAI関連企業は、中国市場での競争激化に直面する。中国がAI分野で技術覇権を確立すれば、日本企業がグローバル市場で競争力を維持するためには、より高度な専門技術やニッチな市場での差別化が求められる。

また、広東省や江蘇省といった「経済大省」が「安定の礎」として経済を牽引する役割を担うことは、これらの地域に生産拠点を置く日本企業にとって、サプライチェーンの安定化や内需拡大の恩恵を受ける可能性を示唆する。しかし、同時に、これら地域が経済成長の目標達成を強く求められることで、環境規制の強化や労働コストの上昇といったリスクも高まる可能性があるため、細やかな事業環境の変化への対応が重要となる。