中国の国家発展改革委員会 (発改委) は、国内で開発されたAI技術を持つスタートアップ「Manus」の海外企業による買収を禁止した。先端技術の国外流出への強い警戒感を示すもので、AI分野では初の公的な買収禁止事例となる。この決定は、今後の外資による対中投資戦略に大きな影響を与える可能性がある。
AI分野で初の買収禁止、技術流出に『レッドライン』
発改委傘下の外資審査当局による今回の決定は、2020年に施行された『外商投資安全審査弁法』に基づき、AI分野のM&A (合併・買収) が公に禁止された初の事例となる。中国メディアの報道によると、この決定は市場に対する強力なシグナルと見なされている。
問題視された『海外脱出』型の動き
対象となったManusは、中国国内のエンジニアチームが中核技術を開発したが、その後拠点をシンガポールに移転。中国国内でのサービスを停止し、米Meta社との提携を発表するなど、中国との関係を断ち切ろうとする動きが問題視された模様だ。当局は、法人格の変更や拠点の移転によって出自を隠し、規制を回避するような『海外脱出』型の技術流出は容認しないという明確な『レッドライン』を引いた形だ。
対外開放の方針は不変と強調
一方で中国政府は、この一件が対外開放政策の後退を意味するとの見方を強く否定している。政府系メディアは「開放は『中国式現代化』の明確な特徴であり、『小さな庭に高い壁』を築くような閉鎖的な政策は取らない」とする論評を掲載。対外開放の方針は揺るがないと強調した。
その根拠として、2023年に中国国内で新設された外資系企業が7万社を超え、前年比で19.1%増加した実績を挙げている。巨大な市場や整備されたサプライチェーンが引き続き外資を引きつけているとアピールし、中国のイノベーションの土壌に根ざすことが企業の長期的成功につながると、国内での事業展開を促している。
日本市場への影響
Manusの海外売却禁止は、日本企業にとって中国におけるAI関連投資の新たなリスクと機会を提示する。まず、先端技術分野における中国政府の統制強化は、日本企業が中国国内のAIスタートアップへの投資を検討する際、将来的な売却・撤退戦略に大きな制約が生じる可能性を意味する。特に、技術の海外流出を警戒する「レッドライン」が引かれたことで、共同開発や合弁事業においても、技術共有の範囲や知財管理の厳格化が不可避となるだろう。
一方で、中国国内での事業展開を促す政府の姿勢は、日本企業に新たな機会をもたらす。2023年に中国国内で新設された外資系企業が7万社を超え、前年比19.1%増加したという事実は、依然として中国市場の魅力と政府の対外開放政策が継続していることを示す。例えば、中国国内の巨大な市場とサプライチェーンを活用し、AI技術を組み込んだ製品やサービスを中国国内で開発・提供する戦略は、今後も有効である。この場合、日本企業は中国の規制環境を熟知し、現地パートナーとの強固な連携を通じて、技術流出のリスクを回避しつつ、中国市場の成長を取り込むことが求められる。Meta社のような海外企業との提携を問題視されたManusの事例は、中国国内での事業展開に特化する戦略の重要性を浮き彫りにしている。